[注目される「水素」技術と最新利用技術]

注目される「水素」技術と最新利用技術≪第3回≫ 〔パート2〕商用サービスを開始した大阪ガスの近未来を見据えた「北大阪水素ステーション」

オフサイト式、移動式への水素供給も行うオンサイト式
2015/06/01
(月)
SmartGridニューズレター編集部

トヨタ自動車の燃料電池自動車(FCV)「MIRAI」の発売を契機に、そのもっとも重要なインフラ設備である「水素ステーション」への取り組みが活発化している。ここでは、まず水素ステーションの3つの方式について整理した後、2015年4月21日に商用サービスを開始した大阪ガスの「北大阪水素ステーション」(大阪府茨木市)について、水素ステーションの構成と全体的なフローを解説する。同ステーションはオンサイト式の水素ステーションであるが、近未来を見据えて、オフサイト式にも移動式にも水素供給を行える出荷機能を備えた、ハイブリッドで先進的な水素ステーションである。
大阪ガス(株)エンジニアリング部プロセス技術チーム課長 池田 耕一郎(いけだ こういちろう)氏への取材をもとにレポートする。

北大阪水素ステーションはハイブリッド式水素ステーション(マザー&ドーターシステム)

 大阪ガス(表1)は、水素ステーションのパイオニア的存在であり、2001年度には日本初の「大阪水素ステーション」を大阪市の酉島(とりしま)にある大阪ガス社内に設置し、2007年度には大阪府庁舎前に日本初の都市型水素ステーションを建設している(現在は廃止)。いずれも都市ガスを原料とし、充填圧力は35MPa注1(350気圧)であった。

表1 大阪ガスのプロフィール

表1 大阪ガスのプロフィール

〔出所 資料をもとに編集部作成〕

 さらに同社は、2015年4月21日に都市ガス改質オンサイト式の「北大阪水素ステーション」注2〔充填圧力は70MPa(700気圧)〕を開所した。この最新ステーションは水素の製造能力に余力があるため、同ステーションだけでなく、他のオフサイト式や移動式の水素ステーションにも水素を供給(出荷)することができる。

 これは、図1に示すように、北大阪水素ステーションはマザー(母)ステーション注3、水素を供給されるもう一方のステーションはドーター(娘)ステーション注4と呼ばれる。このように北大阪水素ステーションは、ハイブリッド式水素ステーション(母娘ステーション)としても活用できることが大きな特徴である。これによって、同ステーションの稼働率を上げることができるようになり、燃料電池自動車(FCV)普及初期の運用として適した方法と考えられている。

図1 オンサイト式(マザー)とオフサイト式(ドーター)による「ハイブリッド式水素ステーション」(マザー&ドーターシステム)の仕組み

図1 オンサイト式(マザー)とオフサイト式(ドーター)による「ハイブリッド式水素ステーション」(マザー&ドーターシステム)の仕組み

〔出所 大阪ガス、北大阪水素ステーション説明資料(2015年5月8日)より〕

水素ステーションの方式:「オンサイト式」「オフサイト式」「移動式」

 FCVへ水素を供給する水素ステーションには、大きく次の3方式がある。

  1. オンサイト式:水素ステーションで水素の製造を行う方式
  2. オフサイト式:別の場所で製造した水素を水素カードル(水素ボンベを複数束ねたもの)などに詰め、その水素カードルを水素トレーラーなどで別の水素ステーションへ運ぶ方式
  3. 移動式:車両の荷台に、水素圧縮機、蓄圧器、ディスペンサーなどを搭載し、水素移送とともにFCVへの充填を行う方式

〔1〕オンサイト式

 水素ステーションは、基本的に図2に示すように、水素の受け入れ以降は水素圧縮機、蓄圧器、ディスペンサー(水素充填スタンド)などの基本構成は同じである。

図2 各方式の水素ステーションの設備構成

図2 各方式の水素ステーションの設備構成

〔出所 編集部作成〕

 都市ガス改質のオンサイト式の、例えば北大阪水素ステーションの場合、前出の図1最上段(左)に示すように、LNG(液化天然ガス)基地から、北大阪水素ステーションまで自社(大阪ガス)のパイプラインで都市ガスを供給する。

 主成分がメタンである都市ガスは、水素製造装置〔HYSERVE(ハイサーブ)-300〕によって改質注5され、燃料電池の燃料である水素(H2)が製造され、FCVに充填する。

〔2〕オフサイト式

 オフサイト式の場合は、通常、別の場所で製造された水素を水素トレーラーなどで運び、水素ステーションに水素を供給する方式である。

 例えば北大阪水素ステーションで製造された水素は、水素カードル(20MPaまたは40PMa)に充填して小型クレーン付きトラックなどで別の水素ステーションに移送し、移送先のステーションではこのカードルから水素を受け入れて、FCVに充填する。

〔3〕移動式

 移動式の場合は、次の2つの方法が考えられる。

  1. 移動式水素ステーションの蓄圧器に充填した水素をFCVに充填する
  2. 充填された水素カードルなどから水素の受け入れを行い、その後、FCVに充填する

 図3は、大阪ガスが発表した移動式水素ステーション(上鳥羽水素ステーション注6)のイメージ図であるが、図に見られるように、移動式水素ステーションには、圧縮機、蓄圧器、ディスペンサー(プレクーラー)などが搭載された水素トレーラーが使用される。同ステーションでは、運ばれてきた水素カードルから、水素を配管経由で移動式水素ステーションに送って処理し、FCVに充填することも可能である。

図3 京都市内初の上鳥羽水素ステーションの仕組み(イメージ図)

図3 京都市内初の上鳥羽水素ステーションの仕組み(イメージ図)

〔出所 大阪ガス、北大阪水素ステーション説明資料(2015年5月8日)より〕


▼ 注1
当時は35MPaと70MPaの2種類のステーションが想定されていた。

▼ 注2
所在地:大阪府茨木市宮島2-4-8。高速道路へのアクセスは「摂津北インターチェンジまで約2㎞」の地点。大阪ガス直営の「北大阪エコ・ステーション」〔CNG(圧縮天然ガス)スタンド〕の隣に併設し、両者を一体運用。

▼ 注3
マザーステーション:他の水素ステーションへ水素を供給可能なステーション。

▼ 注4
ドーターステーション:他のステーションから供給された水素をFCVに充填する水素ステーション。

▼ 注5
改質:天然ガスなどを、触媒を用いて組成・性質を改良すること。触媒とは、その物質自身は変化しないが、他の物質の化学反応の仲立ちとなって反応速度を速めたりする物質のこと。

▼ 注6
上鳥羽水素ステーション:平成27(2015)年度末頃を目途に、京都市内で初となる水素ステーション「上鳥羽水素ステーション」(仮称)の設置を決定したと発表(2015年4月13日)。設置場所は、京都府京都市南区上鳥羽北花名町14(国道1号久世橋通交差点北東角、上鳥羽エコ・ステーションに併設。水素供給方式は移動式(水素タンクなどの機器を備えたトレーラーにより水素を運搬し、FCVに充填する方式)。https://www.osakagas.co.jp/company/press/pr_2015/1222544_15658.html

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