IEEEで想定されているアプリケーションの例
〔1〕アプリケーションの分類
前回の表2に示したセンサーネットワークの応用分野の分類のなかで、IEEE 802.11ah(以下、11ah)は、他の無線ネットワーク技術などと同じく、センサーで定量化される情報を、無線ネットワークによって運ぶ役割を担うことになる。これらを踏まえ、表1に示すIEEE 802.11ahで議論されているアプリケーションの想定を見てみよう。
表1 IEEE 802.11ahで議論されている想定されるアプリケーション
〔出所 https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/11/11-11-0457-00-00ah-potential-compromise-of-802-11ah-use-case-document.pptxをもとに著者作成〕
〔2〕アプリケーションのイメージ例
図1は、センサーやメーターアプリケーションのネットワークイメージ図である。ここでは、
図1 802.11ahで想定されるセンサー/メーターネットワーク向けアプリケーション
〔出所 Potential Compromise for 802.11ah Use Case Document、https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/11/11-11-0457-00-00ah-potential-compromise-of-802-11ah-use-case-document.pptx〕
図2 802.11ahが想定するヘルスケア/フィットネス向けアプリケーション
〔出所 Potential Compromise for 802.11ah Use Case Document、https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/11/11-11-0457-00-00ah-potential-compromise-of-802-11ah-use-case-document.pptx〕
- 近隣地区(地域通信網)に設置された11ahのAP(Access Point、無線アクセスポイント)とホームネットワークをつないだり、
- 広域通信網に設置される分散型オートメーション機器(分散化されたデバイス)とAPをつないだりする
無線通信手段として11ahが想定されている。
図2は、ヘルスケアやフィットネスアプリケーションにおける、病院などでの使用例を想定したイメージ図である。
図3は、802.15.4g(SUN:Smart Utility Networks、いわゆる「Wi-SUN」)を使用した端末ネットワークを集約化し、バックホールのネットワークへつなぐための11ah使用例のイメージ図である。
図3 産業用プロセスオートメーションに対するバックホールネットワーク
〔出所 Potential Compromise for 802.11ah Use Case Document、https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/11/11-11-0457-00-00ah-potential-compromise-of-802-11ah-use-case-document.pptx〕
また、日本では電波法の準拠のほかに、上位のプロトコルとしてECHONET Lite注3に準拠する必要があるため、対象となる無線ソリューションは、おおむねプロトコルスタックまで無線ネットワークデバイスまたはモジュール側で処理しているようである。ちなみに、米国ではECHONET Liteと同様のプロトコルスタックとして、SEP 2(Smart Energy Profile 2.0注4)という規格が採用されている。
▼ 注1
バックホール:基幹網と基地局(AP:アクセスポイント)を結ぶための局所エリアネットワークを指す。背後(Back)で輸送(Haul)するという意味からこの造語が作られた。
▼ 注2
オフローディング:モバイル通信(携帯電話網)において、データ通信量(トラフィック)の増大によって、通信速度が低下したり、つながりにくくなったりした場合に、そのトラフィックの一部をWi-Fiなどを使用して携帯電話網以外へ逃がし、通信網の負荷を分散させること。
▼ 注3
ECHONET Lite:スマートメーターや家電機器などの制御を規定したIP対応のHEMS(家庭用エネルギー管理システム)構築のためのプロトコル(通信規格)。エコーネットコンソーシアムにおいて2011年6月に策定され、2012年2月、経済産業省傘下のスマートコミュニティ・アライアンス(JSCA)において標準インタフェースとして承認された。注4のSEP 2と類似した機能を備えている。
▼ 注4
SEP 2:Smart Energy Profile 2.0、米国のNIST(国立標準技術研究所)で採用されたホームネットワーク(HAN)におけるIP ベースの制御用の標準アプリケーションプロファイル。例えば、スマートハウスにおけるデマンドレスポンス(電力需給の制御)や負荷制御(家電やエアコン等の制御)、電力料金の課金、見える化、さらに電気自動車の充電管理などを行う機能を備えている。