[欧州の風力発電最前線]

欧州の風力発電最前線 ―第5回 もしかして日本の蓄電池開発はガラパゴス?(後編)―

2015/07/01
(水)
安田 陽 関西大学 システム理工学部 准教授

再エネ用EESは「系統側」というのが国際的議論

 次に、電気関係の国際規格発行機関である国際電気標準会議(IEC)が2012年に発行したホワイトペーパー「大容量の再生可能エネルギーの系統連系と大容量エネルギー貯蔵の利用」注5を紹介する。この報告書では、将来、発電電力量ベースで30〜40%もの再エネ電源が導入された場合のエネルギー貯蔵の役割が議論されている。

 この報告書では、興味深いこととして、「系統側」(grid-side)の役割がまず第一に取り上げられ、表2のようにまとめられている。この表2から、再エネの大量導入に貢献する大容量EESの用途は本来多岐にわたり、それぞれに適したデバイスとしてさまざまな選択肢がある(必ずしも蓄電池だけではない)ということがわかる。

表2 系統側に設置する大容量EES(エネルギー貯蔵システム)の用途

表2 系統側に設置する大容量EES(エネルギー貯蔵システム)の用途

〔出所 IEC:White Paper(2012)の表より抜粋して筆者翻訳〕

 一方、「発電側」(generation-side)に関する言及は「系統側」の紹介の後に続いて若干のページが割かれているのみで、しかも「特定の再エネ電源のためだけに大容量EESを設置することは、系統全体の変動性や不確実性を制御するよりも高コストとなる」とさえも明記されている。

 これも普段、私たちが日本語で見聞きする議論(すなわち風力・太陽光発電所に蓄電池を併設して変動成分を除去)とは大きく様子が異なるが、IECのような各国・各産業の合意形成が必要な国際機関の本部が正式に発行する報告書で、このような明示的な言及があるということは、国際的な市場動向・開発動向を読むうえで非常に重要である。

米国の蓄電池開発の傾向を見極める

 一方、米国に目を移すと、米国は現在、シェールガスだけでなく、空前の蓄電池開発ブームとも言われている注6。前述のDOEエネルギー貯蔵データベースを再び用いて分析すると、図1に示した通り、米国内の大容量電力量蓄電池のプロジェクトは294件(総容量546MW)あり、この数値だけ見ると、蓄電池開発は米国でも確かに非常に活況である。

 ここではさらに深堀りして、「蓄電池を何のために使うのか?」について見ていきたい。図2は同データベースに記載された利用項目(全28項目)のなかから蓄電池プロジェクトの利用用途別分類の上位8項目を抜粋したものである。

図2 米国の蓄電池プロジェクトの利用用途(一部複数回答)

図2 米国の蓄電池プロジェクトの利用用途(一部複数回答)

〔出所 DOE Global Energy Storage Databaseのデータより著者作成〕

 この図2を見ると、確かに再エネに関連する用途が多いことも見て取れるが、注目すべきは、「電力料金管理」が蓄電池プロジェクト294件中91件と利用用途のトップに挙がっていることである(なお、「再エネを用いた電力料金管理」も46件ある)。すなわち、電力市場取引における価格調整のための用途が最も多く、表1、表2と同様、ここでもやはり蓄電池は電力市場と密接に絡んでいることが読み取れる。

 なお、図2の各項目は複数回答方式で、多くの利用用途が重複しているが、何らかの形で再エネに関連する利用用途を含むものは全294件のうち図2に掲載していない項目も含め122件(41.5%)と半分以下であり(すなわち再エネを対象としないもののほうが多い)、さらに再エネ電源への併設は51件(17.3%)しかないとことは、留意すべき情報である。


▼ 注5
International Electrotechnical Commission (IEC), “White Paper Grid integration of large-capacity Renewable Energy sources and use of large-capacity Electrical Energy Storage”, 2012, http://www.iec.ch/whitepaper/gridintegration/

▼ 注6
例えば、日本語で読めるわかりやすいレポートとしては、以下を参照のこと。
安東利華、「米国:大形蓄電池への需要拡大」、『ジェトロセンサー2014年11月号』、 pp.62-63、独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)、2014年10月、http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07001868/07001868.pdf

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