[標準化動向]

SEP2とOpenADRの最新動向を聞く!

─ZigBee Alliance 議長 ボブ・ハイル(Bob Heile)氏─
2012/12/01
(土)

2012 年10 月9 日から11 日までオランダのアムステルダムで開催された「Metering Billing/CRM Europe 2012」の会場において、ZigBee Alliance 議長であるボブ・ハイル(Bob Heile)氏とSEP(Smart Energy Profile)のディレクターであるトビン・リチャードソン(Tobin Richardson)氏にインタビューを行い、最新のSEP 2 やOpenADR などの動向をお聞きした。
聞き手:SmartGrid ニューズレター編集部/コントリビューティングエディター 新井宏征

ZigBee AllianceとZigBee SIG-Jの関係

▼ T. Richardson氏

T. Richardson氏

新井:2012年8月1日に、ZigBee Alliance(以下、Alliance)のWebサイトに「日本におけるスマートハウス推奨仕様の検討グループを設置」注1というプレスリリースが掲載されました。これと関連して、日本でのZigBeeの活動拠点であるZigBee SIG-J注2が設立された背景と、Allianceとの関係について教えてください。

Bob:SIG-Jは、日本でビジネスを営んでいる企業が参加するAllianceのサブグループです。私たちは世界共通で利用可能な標準規格を策定しようと努力していますが、各地域にあわせた機能強化が必要になることは常に起こりえます。その点で、SIG-Jは日本市場にあわせた機能などを提案するのに最適な立場にいます。

先にお話の出たプレスリリースは、経済産業省が2011年12月に承認したスマート家電向けのECHONET Lite規格の採用決定に対応したのです。しかし、現在、ECHONET Liteで決まっているのは、アプリケーション層の部分だけであり、それより下位の層は決まっていないし、提案もされていません注4。このプレスリリース発表は、私たちがこの件に関して真剣に考え提案をまとめていることを示すためなのです。10月22日からスペインのバルセロナでメンバーミーティングが開催されますが、その場で、今後のAllianceの対応とどのように日本市場をサポートするのかについて、最終的な提案が出てくると思います。デマンドレスポンスの課題の解決も含め、日本はとても重要な市場だと考えています。

OpenADRとSEP(Smart Energy Profile)の関係

▼ B. Heile氏

B. Heile氏

新井:米国ではデマンドレスポンス向けにOpenADR注3が有望な規格として審議されていますが、OpenADRをどう見ていますか?

Bob:OpenADR(AMIが対象とする範囲)は、デマンドレスポンスに焦点を当てて規格化されています。私たちはOpenADRよりも対応範囲が広いIP対応のSEP 2、つまりZigBee Smart Energy Profile 2(スマートハウス内が対象)を検討しています。

これは、現在新たに標準化を進めているIP対応のZigBee IP上で動作するオープンなSEPです。すでに、世界中で導入されている従来のSEP 1.0/1.1ファミリー(非IP対応)でも、OpenADRと同様なことが実現でき、さらにそれ以上のことを実現できる規格となっています。

SEP 2とCSEPの動き

新井:ところで、NIST(米国国立標準技術研究所)が、調達仕様として採用を決めているSEP 2はいつ完成するのでしょうか?

Bob:今日時点でSEP 2の規格自体は完成しています。現在は、SEP 2の相互接続性なども含めて多くのテストが行われています。標準規格として完成させるためには、規格に関連するテスト計画を完成させる必要があります。さらに、テスト手法やテストハーネス(テスト環境)も必要になります。標準規格自体が完成していても、このような要素が100%問題ないと証明されなければなりません。

Allianceはこのプロセスを始めるために、すでに3週間にわたるテストイベントを実施しました。SEP 2は複数の通信プロトコルで構成されているので、アライアンスのためのアライアンスが必要になります。それはCSEP注5と呼ばれている団体注6で、テスト計画の作成とテストイベントの実行という責任を負っています。CSEPは、現在までにすでに2度のイベントを開催してきましたが、今後、少なくともあと3〜4回は開催されるでしょう。

参加企業がイベントとイベントの合間にソリューションを開発したり、エラーを修正したりするためには、最低でも1〜2カ月は必要になります。そのため、テストが完了し、現場で利用できる準備が整ったと宣言できるまでに、あと6カ月(2013年4月頃まで)はかかると予想しています。

このテストイベントに興味を持っている企業は、ZigBee Alliance、HomePlug Alliance、Wi-Fi Allianceの3つのアライアンスのどこかに所属していれば参加することができます。

テストが完了すれば、企業は製品開発や製造のため、ある程度の時間が必要になります。その後、電力会社等は、自分たちのラボにそれらの機器を持ち込み、機器を用いた小規模な実証実験をすることになります。このような実証実験には6カ月以上かかると予想され、このような時間枠で見ると、SEP 2を大規模に導入するまでには、あと数年はかかると考えられます。

Tobin:電力会社では、停電を防止したり、電力を安定供給したりするために、非常に強固なセキュリティが求められるので、必然的に、それくらいの時間がかかってしまうのです。

802.15.4g(SUN)、802.15.4eの世界での関心

新井:ところでZigBeeは802.15.4をベースにしていますが、現在策定中のZigBee IPの下位プロトコルとして、物理層では802.15.4g注7、MAC層では802.15.4eを採用するという話がありますね。これは日本だけなのでしょうか?

Bob:日本では、2012年7月から920MHz帯の周波数が利用できるようになったことや802.15.4g(SUN)が標準化されたこともあり、802.15.4gについては強く興味をもっていると言われています。今後、世界中で大きな関心が寄せられるとは思いますが、現在、このように強い関心をもっているのは日本だけです。

欧州のKNXとZigBee(SEP 2)/ECHONET Liteの動向

新井:ZigBee(SEP 2)とECHONET Lite、そしてKNX注8の関係をどう見ていますか?

Bob:何年もの間、私たちはお互いに話をしてきました。現在、日本で、ZigBee(SEP 2)とECHONET Liteの間で連携を図っていく努力が開始されたことは、今後の市場への展開において、大変よいスタートだと思っています。

同様なことが、欧州のKNXとの間でもできることを願っています。今後とも、私たちは欧州と話し合いを進めていきたいと思います。

新井:ありがとうございました。


▼ 注1
“ZigBee Alliance Forms Group Examining Japan’s New Smart Home Recommendations”

▼ 注2
ZigBee SIG-J:<正式名>一般社団法人ZigBee SIGジャパン。ZigBee Special Interest Group-Japan、ZigBee日本特別委員会。2005年9月に設立。

▼ 注3
OpenADR:Open Automated Demand Response Task Force。電力会社とオフィス・家庭などの需要家との間で、料金表示や、直接負荷制御(家電機器やエアコンの制御)をするための通信メッセージ交換の標準を策定するタスクフォースおよびその標準名。

▼ 注4
その後の2012年11月9日、TTC(情報通信技術委員会)がECHONET Lite規格の下位層の「TR-1043:ホームネットワーク通信インタフェース実装ガイドライン」の制定を発表し、公開した。

▼ 注5
Consortium for SEP 2 Interoperability、SEP 2相互接続性コンソーシアム。

▼ 注6
2011年10月にZigBee Allianceのほか、HomePlug Alliance、Wi-Fi Allianceの3つのアライアンスが合同で設立した。詳細は、http://www.csep.org/参照。

▼ 注7
802.15.4g:SUN(Smart Utility Network)、2012年3月に策定。

▼ 注8
KNX:コネックス。KNX Association(KNX協会、本部:ベルギー・ブリュッセル)によって策定された、家庭やビルに関する世界的な通信プルトコルの標準。すでに、欧州標準(CENELEC EN 50090およびCEN EN 13321-1)、国際標準(ISO/IEC 14543-3)、中国標準(GB/Z 20965)、米国標準(ANSI/ASHRAE 135)となり広く普及している。

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