日本の電力供給システムの仕組み
次に、日本における発電所から需要家(一般家庭)までの電力供給システムの仕組み(電力系統)を簡単に見てみる。
図2は、発電所から一般家庭などの需要家までの電力供給の仕組みを示したものである。図2を見ると、発電所でつくられた電気は、「送電線」 ⇒ 「変電所」 ⇒ 「配電線」の経路をたどり、大工場や中工場、一般家庭、コンビニなどの各需要家まで供給される。このように電力供給システムは、大きく、「発電部門」(発電所)と「送配電部門」(送電:発電所〜変電所の区間、配電:変電所〜需要家の区間)というように2つの部門に分類される。
図2 電力供給システムの仕組み(発電所から需要家まで)
出所 経済産業省 資源エネルギー庁「電力小売市場の自由化について」、 http://www.enecho.meti.go.jp/category/electricity_and_gas/electric/pdf/seido1206.pdf
通常、図2の左上に示す火力や水力による発電所の発電機では、数千〜2万V程度の電圧の電気が発電されるが、これを発電所に併設された変電所(電圧を変換する場所)を使って、送電に効率のよい高い電圧(20万〜50万V)に変換し、送電線に送り出す注3。
ここで送電線とは、発電所と変電所、変電所と変電所の相互間(あるいは発電所相互間)を連絡する電線路のことである。この送電線(配電線も含めて)は、図2に示すように、次のような役割をもっている。
- 発電所からの20万〜50万Vの高電圧は「一次変電所」(図2の中央)で2.2万〜6.6万Vに降圧され、一部は大工場(2,000kW以上の電力を使用)の需要家などに送電される。
- また、図2の右側に示す配電用変電所では6.6kVに降圧され、一部は中工場(50kW)の需要家に送電される。
- さらに、配電用変電所からの6.6kVの電気を電柱に設置された柱上変圧器(トランス)で100Vあるいは200Vに降圧して、一般家庭やコンビニなどに送電(低圧電線路:配電線)される仕組みとなっている。
以上のような電力供給システムは、電力小売全面自由化後は、現在の10電力(一般電気事業者)は、「発電事業」「送配電事業」「小売事業」を兼業する事業者となり注4、発電所をもっている特定規模電気事業者(いわゆる新電力)は、「発電事業」と「小売事業」を兼業する事業者となる。この業態の変化によって、サービスの内容や電気料金も変わり、各電力事業者の競争が激化する。
(特集パート2:スペシャルインタビューに続く)
▼ 注3
一般に、電力(P)=電圧(V)×電流(I)の式で表されるため、電圧が高いほど電流を低くすることができる。すなわち、送電線を流れる電流(I)を低くすることができるため、送電線の抵抗によって発生する熱損失を少なくすることができ、効率よく電気を送ることができるようになる。
▼ 注4
2020年には法的分離がなされ、送配電部門は電力会社から独立した組織になる。