今回の実証実験の成果例
今回のIndustry 4.1J実証実験では、図1のクラウド上の各アプリケーションについて、次のようなことが実証された。
〔1〕PLCとJoyWatcherの負荷試験
図2に示すように、現場の模擬プラントである「PLC」からクラウド上のJTエンジニアリングの「JoyWatcher」(工程監視構築ツール)に対して連続的にデータを送る負荷試験を実施した。この実験では、1秒間に1万メッセージを安定的に送信できることが確認された。これは超大手企業を除くほとんどの企業で1対(「PLC」と「JoyWatcher」の1対)で処理できることが実証された。
図2 実証試験:PLC ⇒ プライベートクラウド(JoyWatcher)間の伝送結果
出所 NTTコミュニケーションズ「製造現場とクラウドをセキュアにつなぐ“Industry 4.1J”実証実験成果報告」、2015年11月
〔2〕OSIsoftのPI System間の通信
また、クライアント-サーバ型である模擬プラント上のOSIsoftのPI System(クライアント)とクラウド上のPI System(サーバ)間の通信の場合は、1秒間に4万8,000イベントの通信が可能であることが確認された。これも超大手企業を除くほとんどの企業で1対(PI Systemのクライアントとサーバの1対)で処理できることが実証された。
〔3〕ウィルスの検出とブロック
さらに、総合的なシステムのセキュリティの検証として、Intel SecurityのSIEM(統合イベントログ監視ソフト)がウィルスを検出し、それを日本DirexのL2スイッチで攻撃をブロック(止める)して防ぐ。あるいはその逆に、日本DirexのL2スイッチで検出したインシデントをIntel Security側で制御してブロックする実証なども行われている。
“IoTトライアルパック”を提供開始
ここまで、Industry 4.1J実証実験の成果の一部を見てきたが、現時点は実証実験のロードマップに示す第2段階から第3段階に向かっている状況である(図3)。
図3 Industry 4.1J実証実験のロードマップ
出所 NTTコミュニケーションズ「製造現場とクラウドをセキュアにつなぐ“Industry 4.1J” 実証実験成果報告」、2015年11月
第3段階(2015年10月頃から)では、ユーザーの個別実証実験が規定され、VECの実証実験とは別に、いくつかのVEC会員の製造システムにおいて、すでに個別の実証(本番導入前の実証)が開始され始めている。
実証実験を加速させるために、NTTコミュニケーションズでは、図4に示す「Connected Factory」(コネクテッドファクトリー)という、IoTトライアルパックを作成し、2015年10月末から受付を開始した。
このトライアルパック(Connected Factory)の内容は、具体的には次の通りである(図4)。
図4 ユーザーが個別に実証実験できる“IoTトライアルパック”提供開始
出所 NTTコミュニケーションズ「製造現場とクラウドをセキュアにつなぐ“Industry 4.1J” 実証実験成果報告」、2015年11月
(1)用途:工場設備の接続向け
(2)提供サービス
- Enterprise Cloud(仮想サーバ2台:VECの実験で使用しているサーバ仕様と同じもの2台)
- Arcstar Universal One(VECの実証試験と同じ仕様の光回線1本/モバイル回線1本)
(3)トライアルパックの料金
- 3カ月間無料(2015年度内に申し込んだユーザーが対象)
- 3カ月以内に中止することは可能
- 3カ月以降は月額11万円程度の有料となる
- サーバ側およびプラント側にインストールするアプリケーションソフト、および各デバイス(生産設備)は顧客側で用意
図5に、IoTトライアルパック「Connected Factory」の利用イメージを示す。
図5 IoTトライアルパック「ConnectedFactory」の利用イメージ
出所 NTTコミュニケーションズ「製造現場とクラウドをセキュアにつなぐ“Industry 4.1J” 実証実験成果報告」、2015年11月