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世界初となる舶用水素エンジンの陸上運転に成功、川崎重工ら3社

ジャパンエンジン工場内に液化水素燃料供給設備を設置
2025/10/21
(火)

世界初となる舶用水素エンジンの陸上での運転に成功

 川崎重工業株式会社(以下、川崎重工)、ヤンマーパワーソリューション株式会社(以下、ヤンマーパワーソリューション)、株式会社ジャパンエンジンコーポレーション(以下、ジャパンエンジン)の3社は、舶用水素エンジンの陸上での運転に成功した。世界で初だという。2025年10月20日に発表した。

図1 川崎重工が開発した液化水素燃料供給設備の外観

出所 川崎重工業株式会社ほか プレスリリース 2025年10月20日、「世界初、コンソーシアムによる舶用水素エンジンの陸上運転に成功しました」

川崎重工・ヤンマーパワーソリューションのエンジンで所定出力での運転を確認

 3社の取り組みは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「グリーンイノベーション基金事業(以下、GI基金事業)/次世代船舶の開発」の委託事業の1つ。「舶用水素エンジンおよびMHFS(Marine Hydrogen Fuel System:舶用水素燃料タンクおよび燃料供給システム)の開発」事業として、コンソーシアムを組成し、(1)各社が出力範囲と用途の異なる舶用水素エンジンを並行開発するとともに、(2)そのインフラとして舶用水素燃料タンクと燃料供給システムを開発している。

 今回の陸上運転にあたり、3社共用となる実証用の液化水素燃料供給設備をジャパンエンジン本社工場内に新設した。川崎重工が製造した同設備は、液化水素を貯蔵・ガス化し、高圧または低圧で各社のエンジンへ水素燃料を供給する能力を持つ。これにより、実船でのさまざま用途を想定したエンジン運転試験が可能になるという。

 新設備を用い、川崎重工とヤンマーパワーソリューションは、それぞれが開発する中速4ストロークエンジン(川崎重工製:8L30KG-HDF、ヤンマーパワーソリューション製:6EY22ALDF-H)で水素燃焼注1を実施し、所定の出力で運転できることを確認した(図2)。

図2 川崎重工製エンジン(左)とヤンマーパワーソリューション製エンジン(右)の外観

出所 川崎重工業株式会社ほか プレスリリース 2025年10月20日、「世界初、コンソーシアムによる舶用水素エンジンの陸上運転に成功しました」

 なお、ジャパンエンジンが開発している低速2ストロークエンジン(6UEC35LSGH)は、2026年春頃の運転開始を予定している(図3)。

図3 ジャパンエンジン製エンジンの完成予想図

出所 川崎重工業株式会社ほか プレスリリース 2025年10月20日、「世界初、コンソーシアムによる舶用水素エンジンの陸上運転に成功しました」

 これら3社のエンジンは、GHGの大幅な削減が見込まれることに加え、水素とディーゼル燃料を切り替えて使用できる二元燃料仕様であり、冗長性を確保している点という。

 今回の陸上での実証試験を経て、今後は船社・造船所と協力し、それぞれのエンジンの実船実証運航を進める。3社は、国産メーカーとして技術を結集し、将来的な水素燃料船の普及拡大をリードしたい意向だ。


注1:水素燃焼:着火に用いる少量のディーゼル油以外は、全ての燃料を水素とした(エンジンにおける)燃焼。

参考サイト

川崎重工業株式会社 プレスリリース 2025年10月20日、「世界初、コンソーシアムによる舶用水素エンジンの陸上運転に成功しました」

NEDO、「舶用水素エンジン及びMHFSの開発」
 

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