HEMSは気象予測の機能を、電気自動車の実験は行わない
〔1〕気象予測機能が求められるHEMS
企業などでは複数の電力会社と契約している場合があるが、米国においても、電力会社と一般家庭(需要家)はだいたい1対1の契約である。そのため、自宅の太陽光発電を蓄電池に貯めて、どのタイミングでその電力を使うと最も効率が良いかという計算をするHEMS(家庭内エネルギー管理システム)の必要性が出てくる。現在は、電力料金が高いため家庭に貯めておいた電気を使うが、電力料金が安い場合には家庭に貯めた電力はとっておく。あるいは太陽光の場合は、明日は晴れそうなので今のうちに貯まっている電力を使ってしまおう、などということをいろいろ考えなくてはならない。
したがってHEMSには、明日天気になるかどうかという、気象予測の機能が求められる。明日の天気予報を見て、電池を空けておくか、貯めたままにしておくかを決めることになるため、気象庁などの役割が大きくなるのである。
ロスアラモスサイトでは、このような気象予測と連携したHEMSの取り組みも行われている(写真1)。
写真1 ホームエネルギーの消費と電力取引の例
〔2〕電気自動車の実証実験は行わない!
ニューメキシコ州ロスアラモスの実証試験プロジェクトエリアには、8000世帯があるが、地理的な条件から電気自動車の実証実験は行われていない。
その理由は、この地域は電気自動車に適さない場所だからである。例えば、アルバカーキの空港からロスアラモスへ自動車で行く場合、片道100マイル(160km)くらいあり、高速道路を1時間半も走ることになる。このため、エアコンをつけて走行すると、アルバカーキからロスアラモスへ着くまでには、蓄電池が切れしてしまう。
また、道路も平坦ではなく坂が多いため、ガソリン車の場合でも3000cc以上の車でないと安全に走行できない地域であるため、電気自動車には向かないエリアである。さらに、アメリカの人口希薄地域では、場所によっては200km以上もガソリンスタンドがないことがざらにあり、電気自動車ばかりでなく、ガソリン車にとっても燃料切れが起こりうる地域である。
このような背景から、ロスアラモスサイトの実証実験では、電気自動車をスマートグリッドの構成要素として活用する取り組みは実験の対象から外されている。
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以上、2号にわたって日本とは異なる自然環境や規制要件の中で、日本のもつ優れた技術を現地に適した内容でシステム化し、運転実績を積み重ねている「米国ニューメキシコ州ロスアラモス郡での実証事業」を中心に、その取り組みについて紹介した。
このような国際的な実証事業を通して、新しいノウハウを蓄積し、あらゆる条件に対応できる日本のスマートグリッドシステムが開発され、世界市場へ展開することを期待したい。