日本と欧州の電力システムの基本的な違い
〔1〕日本の場合:農耕民族
日本人は農耕民族であるから、お上(国)という組織があって、自分たちに関係するインフラ的なことは誰かが(国が)きちんと用意してくれたうえで成り立っているようなところがある。
そのため、この場所がだめだったら、またどこかへ引っ越すなどということはなかなかしない。すなわち、自分たちが住んでいる場所に電力システムのインフラがきちんと構築されていることが前提になるので、その人(家庭)の考えによって、太陽光発電を設置する人もいれば設置しない人もいるということになる。
このような背景から、電力会社の電力システムは、インフラとしてなくてはならないことになる。発電所も国策事業で、電源三法注3で国として地元に対応し、これにより、地元の承認が得られている。
〔2〕欧州の場合:狩猟民族
一方、欧州の人々の場合は、筆者の経験から狩猟民族であることを実感させるものがある。具体的には、欧州の人は自宅に必ず暖炉を備えるところからも、感じ取ることができる。つまり、彼らは電気が来なくてもガスが来なくても、暖炉でまきを燃やして煮炊き(料理)をしたり、暖を取ったりすることを考えるのである。
しかし、その場所がだめだったら、また次のところに引っ越してしまうというような、狩猟民族独特のライフスタイルがあり、そこに彼らの本能的なものを感じる。例えば発電所が必要であれば、住居の隣接地でも自ら消費するものとして、地元は承認する。
地産地消の場合、電力会社は不要か
最近、日本では太陽光発電や風力発電が容易に導入できるようになったことから、地産地消という言葉をよく見聞きするようになっている。地産地消とは、電力会社からの電力に頼らないで、必要な電力は自分たちで発電して、自分たちで電力を消費するような形態をいう。
例えば本当に地産地消になったときには、究極的に電力会社は要らないのかといったことも話題に上るようになった。
筆者の経験からいうと、地産地消というのは、一般家庭や、ある限定された地域の小容量の電力消費の場合に個人の責任で実現できることであり、大容量の電力を消費する工場やオフィスビルがある環境では、地産地消の形態は考えにくい。
その理由として、日本の場合は、電力会社の電力網がある程度出来上がっており、高効率で環境に十分対応した電源をもった安定した電力供給システムが完成して、それを享受しているからである。
このため、そのような地域に、同じ機能をもった電力システムを新たな投資をして、地産地消エリアを大規模に広げていくことは、電気が空気のような存在となっている日本のような場合には、コスト面から考えてかなり難しい状況であると考えられる。
(第3回へつづく)
▼ 注3
電源三法:1974年(昭和49年)に制定された、次の3つの法律の総称である。
①電源開発促進税法
②特別会計に関する法律(旧・電源開発促進対策特別会計法)
③発電用施設周辺地域整備法