30分値:AルートとBルートのどちらにも提供
「30分値」の場合、スマートメーターは「0:00〜0:30から23:30〜24:00まで」という1日のうち30分ごとに計48回、電力量を計測することになる(順方向と逆方向を考えると、計測回数はその倍の96回/日となる)注6。
〔1〕Aルート側:直前の30分間の電力量
Aルート側でいうと、海外では1日分の計測データをスマートメーター内部に保持しておき、翌日早朝の時間帯にまとめて電力会社に送るような使い方がされてきた。
しかし、東京電力のAルート運用では、計測したデータを電力会社のシステムに送る「伝送頻度」についても「30分を基本とするが、伝送頻度を変更する機能拡張性を備えることとする」となっており、基本は30分ごと、つまり直前の30分間にどれほど電気を使ったか(あるいは、太陽光発電などの余剰電力を系統側に売電したか)を通知するのが、東京電力のスマートメーターの仕様のようである。
〔2〕Bルート側:30分値は価値があるか?
Bルート運用の伝送頻度に関しては、Aルート同様、基本は30分ごとにスマートメーターが計測した値をHEMSなど需要家側のシステムに提供するものと思われる。
ただし、「見える化」の観点からすると、30分後に「あなたは直前の30分間に電気を使いすぎていました」と表示されても、ピンとこない。将来的にも、HEMSで高度なエネルギー管理をする場合を考えると、少なくとも5分ごとくらいに電力量のデータが提供されないと、Bルートでスマートメーターからデータが提供される意味が感じられず、非常に価値の低いデータ提供になってしまう可能性があるのではないだろうか。
Profile
新谷 隆之(しんたに たかゆき)
インターテックリサーチ株式会社
1974年3月、大阪大学工学部産業機械工学科卒業。1974年4月、日本ユニバック(現 日本ユニシス)入社。基本ソフト/ミドルソフトの開発・保守を経て、電力業務関連システムの調査・評価を担当。2009年5月、スマートグリッド関連のリサーチを行うインターテックリサーチ株式会社を起業し、現在に至る。
▼ 注6
ここで「30分値」に注目すると、スマートメーターからは、AルートとBルートのどちらにも「30分値」が提供されていることがわかる。なお、計量部が電力量を計測する時間間隔が30分でも、計測されたデータを通信部から電力会社またはHEMS側に送る時間間隔は、30分ごとに合わせる必要はない。海外では、15分値や30分値を1日分溜めて、翌日早朝まとめて電力会社側に送るシステムもある。