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スマートハウスにおけるディスアグリゲーション型サービスとは?

─これだけは押さえておきたいスマートグリッド基礎用語─
2015/07/01
(水)
新井 宏征 株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役社長

最近、海外のエネルギー関係のニュースサイトを見ると “Energy Disaggregation”、あるいは単に“disaggregation”(ディスアグリゲーション)という言葉を見かけることが増えてきた。節電することによって使われなくなった(浮いた)電力を集めて販売することを「アグリゲーション」と呼び、そのようなプレイヤーを「アグリゲータ」と呼ぶことがあるが、ディスアグリゲーションとは、そのアグリゲーションに否定の意味を表す接頭辞dis-がついたものである。つまり、「集める」ことの反対の「分離」という意味を表す言葉である。
ここでは、スマートハウスビジネスと密接に関係するこの用語について解説する。

ディスアグリゲーションとは?

 スマートメーターから収集したデータだけでは、家全体の電力の利用量はわかるが、例えばどの機器でどのくらいの電力を使っているのかを知りたいというニーズにはなかなか応えられなかった。しかし、最近ではこれを満たす技術を利用したサービスが登場している。それが「ディスアグリゲーション型」と呼ばれているサービスである。

 電力中央研究所による「スマートメータデータ分析情報の活用 ―分析技術の動向調査と需要分析の予備的検証―注1」という論文では、「主幹消費量データからどのような電気機器が使用されているかを分解して推定する手法は、一般に、ディスアグリゲーション(disaggregation)または用途分解と呼ばれる。」と解説されている。要するにディスアグリゲートとは、家全体の電力の利用量データを分解し、各機器などの単位での利用状況を把握することができるようにする技術である。

PG&EとBidgely(ビッジリー)の家庭向けエネルギー分析サービスの実験

 ディスアグリゲーション技術についての最も新しいものの1つに、2015年3月25日に発表されたカリフォルニア州のユーティリティであるPG&Eとディスアグリゲーション技術を使った家庭向けエネルギー分析サービスを提供しているBidgely(ビッジリー)の実験結果注2がある。同社は、2011年にカリフォルニア州でインド出身のAbhay Gupta(アブヘイ・グプタ)らによって設立された企業であり、Bidgelyという単語はヒンディー語で「電気」を意味している。

 この実験は、2014年8月から12月の期間に、PG&Eの顧客約850世帯に対してBidgelyのHomeBeat(ホームビート)と呼ばれるディスアグリゲーション技術を活用したサービスを導入して行ったものである。この実験の公式な結果として、全体で7.7%のエネルギー利用量の節約ができたと発表している。

Bidgelyの実際のデモ画面

 実際のBidgelyのデモ画面を見てみると、トップ画面は図のようになっている。

図 BidgelyのWebポータル デモ画面(トップ画面)

図 BidgelyのWebポータル デモ画面(トップ画面)

〔出所:http://www.bidgely.com/eon-demo?type=upgraded#/1/1428374399000/0/n/n/false/n/1/n/n/n/n/false

 ここには24時間ビュー(1日ビュー、画面では前日午後12時から当日午前11時までの実績が表示されており、当日午後12時のデータは計測中)の画面だが、トップには24時間分の時間ごとの電力使用額が棒グラフで表示されている。これによると、この24時間で3.74セント(約4.5円)分の電力を使っていることがわかる。

 画面中段の一番左に表示されているのがディスアグリゲーションの数値である。赤地に白抜きの文字で家全体(WHOLE HOUSE)の利用額3.74セントが表示されている。この金額は、当然、トップに出ている金額と同じものである。WHOLE HOUSEの下を見ると、この3.74セントの内訳として暖房関連(1.49セント)、照明関連(0.90セント)、調理関連(0.45セント)、その他(0.90セント)というディスアグリゲーションされた結果が表示されている。この時点では、暖房などの空調に電気を多く使っていることがわかる。

 画面の一番下を見ると、節約のためのヒント(Saving Tips)としてサーモスタットを導入することで、初期コストはかかるものの、利用者の手間はあまりかけずに利用量を削減することができると提案している。さらに右下には、具体的な年間の削減額(75セント)も表示されている。

東京電力とインフォメティスによるディスアグリゲーション技術の共同実証実験

 2013年にソニーから分離独立したスタートアップであるインフォメティス(東京都・港区)も、犬型ロボットAIBO(アイボ)などの研究で培った人工知能(AI)技術を応用したディスアグリゲーション(彼らは「機器分離」という訳語をあてている)を使ったサービスを開発している。これは、データを測定し、そのデータをクラウドに集め、AI(Artificial Intelligence、人工知能)を使った用途分離を行い、その結果を分析し、レポートとして伝えるという一連のプロセスを実現している注3

 2014年10月29日に発表されたNEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)による「平成26年度 戦略的省エネルギー技術革新プログラム」の公募において、同社の技術を利用した「ディスアグリゲーションHEMSの実用化開発注4」というプロジェクトが採択されている。

 インフォメティスの技術はNEDOのプログラムだけではなく、実際の企業での実証実験も行われている。そのうちの1つは、2015年1月に発表された東京電力との共同実証実験である注5。この実験は、2015年3月から2016年3月までの1年をかけて行われるもので、一般家庭約300世帯、法人オフィス・商店など約20カ所に対して行われている。

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 本記事は、『スマートハウス/コネクテッドホームビジネスの最新動向2015』[ Apple/Google/Samsung/Amazonの最新プラットフォームからサービス動向まで ](インプレス刊、2015年6月)の第4章より抜粋し、一部加筆・修正して再掲載したものである。

同書の内容詳細はこちら⇒ https://r.impressrd.jp/iil/HOME2015

Profile

新井 宏征

(あらい ひろゆき)

株式会社スタイリッシュ・アイデア 代表取締役社長。
SAPジャパン、情報通信総合研究所を経て、2013年よりプロダクトマネジメントに特化したコンサルティング会社である株式会社スタイリッシュ・アイデアを設立。ICT分野におけるリサーチから得た最新の知見に基づき、企業に対するプロダクトマネジメント制度の導入や新規事業開発、製品開発の支援を行っている。


▼ 注1
http://criepi.denken.or.jp/jp/kenkikaku/report/detail/Y14003.htmlを参照。

▼ 注2
Study: Bidgely Helps PG&E Pilot Participants Save Up To 7.7% | Business Wire(http://www.businesswire.com/news/home/20150325005105/en/Study-Bidgely-Helps-PGE-Pilot-Participants-Save#.VRLgz0Z_9nc

▼ 注3
http://www.informetis.com/tech/index.html

▼ 注4
平成26年度「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」の第2回公募に係る実施体制の決定について(http://www.nedo.go.jp/koubo/DA3_100068.html)参照。

▼ 注5
http://www.informetis.com/news/nr0126.pdf参照。

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