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アンシラリーサービスとは?

─これだけは押さえておきたいスマートグリッド基礎用語─
2014/04/01
(火)

アンシラリー(ancillary)という言葉は、聞き慣れない言葉だが、「補助的な」という意味があり、電気事業の主たるサービス(プライマリサービス)、すなわち電気エネルギーの供給に対して、それを確実に行うため、エネルギー供給には直接結びつかない諸々の補助的なサービスを、主として北米ではアンシラリーサービスと呼んでいる。
しかし、日本におけるこの用語の定義は少し異なっている。ここでは、日米双方のこの用語についての考え方を見ていく。

日本におけるアンシラリーサービスの定義

アンシラリーサービスとは何なのか?

まず、東京電力のホームページからダウンロードできる「アンシラリーサービスのご案内」を見てみよう(http://www.tepco.co.jp/service/custom/houjin/pdf/ansira2014.pdf)。

この案内によると、「送配電ネットワークには、電気をお送りする機能とともに、当社の電源設備と一体となり周波数安定等の電力品質を維持する機能(アンシラリー機能)があります。特別高圧または高圧のお客さまで、発電設備を当社の送配電ネットワークに連系し、当該発電設備の電気をその設置場所でご使用になるお客さまについて、アンシラリーサービス料を申し受けます。」

とあり、アンシラリーサービス料は、発電設備をもつ顧客側が、電力会社側が実施する、系統の電力品質維持行為の代償として支払うものとなっている。

米国におけるアンシラリーサービスの定義

アンシラリーサービスの定義をこのような形でとらえていると、米国におけるアンシラリーサービスの記述に対して違和感をもつのではないだろうか?

米国では、発電事業者や(デマンドレスポンス資源を提供する)顧客が、アンシラリーサービスの提供者で、独立系統運用者(ISO注1) が、アンシラリーサービスの提供を受ける側だからである。

ここでは、米国連邦エネルギー規制委員会(FERC注2)によるアンシラリーサービスの定義を紹介してみよう注3

アンシラリーサービスに何が含まれるかについても諸説あるが、FERCでは、以下の6種類に分類している(表)。

表 FERCのアンシラリーサービスについての6つの分類表 FERCのアンシラリーサービスについての6つの分類
(注)この他に、ブラックスタート(black start)も、アンシラリーサービスの1つと考えられている。これは、系統からの電力を利用しなくても自分自身で起動し、電力供給を開始することができる発電設備のみが提供できるサービスで、系統の復旧にはなくてはならないサービスである。


▼ 注1
ISO:Independent System Operators

▼ 注2
FERC:Federal Energy Regulatory Commission

▼ 注3
出典:編著 奈良 宏一、『電力自由化と系統技術 -新ビジネスと電気エネルギー供給の将来-』「第4章 アンシラリーサービス」、電気学会、2008年9月1日

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