[特集]

北九州スマートコミュニティにおけるデマンドレスポンスの実践的展開─後編─

─次世代都市を制御するCEMS(地域節電所)が活躍!─
2013/04/01
(月)
SmartGridニューズレター編集部

スマートメーターの中にオン/オフの開閉器を実装

〔1〕CEMSから負荷制御が可能へ

一方、節電という面からみると、北九州の実証では、スマートメーターの内部に電力の供給側から自動的にオン/オフ可能な開閉器を内蔵させて、負荷制限を行っている。例えば、関東で生活している場合は一般的に、東京電力と電気契約を結んで、30A(アンペア)あるいは50Aなどの契約アンペア数を決めている。

一方、現在、北九州スマートコミュニティの実証では、前述したように、すでに開閉器(オン/オフ機能)を内蔵したスマートメーターが230世帯に設置されており、使用電力が契約アンペアまで到達したら、その家庭の電力は、CEMS(センター)からリモートで自動的にオフできるという設定が可能となっている。

2011年3月11日の東日本大震災の直後に輪番停電注4があった際、「1軒1軒が少しずつ節電すれば輪番停電することはなかったのではないか」という有識者の方々の意見があったが、現在の一般家庭の電力メーターでは一律に10Aずつ節電する機能はないのである。しかし、北九州の実証で230世帯に設置されたスマートメーターであれば、そのような制御は可能となる。

このため、電力が足りなくなった場合に、例えば60Aから50Aへと一律10Aカットしたり、60Aから40Aへと一律20Aカットしたりすることが可能となる。その設定値を超えるとスマートメーター内の開閉器がオフとなり、電力の供給が停止するようになる。すなわち、このような機能を搭載して節電することも可能なのである。

また、北九州市の実証では基本的にデマンドレスポンス(DR)の依頼をCEMSからスマートメーターを経由して宅内表示器に表示することで、あとは住んでいる人々の行動によって省エネを行ってもらう方式を取っている。

現在、家庭に人工透析器のようなものも含めて、いろいろな医療機器が持ち込まれ始めている。その際に、オートで電力を切断するようなことがあると人の命にかかわる危険性が出てくる。そのとき、オートではなく北九州市の実証のようなマニュアル方式であれば、多少電気代は高くなる(電力がひっ迫しているため)が、切断されなくて済む。

このように考えると、OpenADRのような仕組みが日本の文化になじむのかどうか、今後の実証が必要である。

〔2〕海外から見た日本のデマンドレスポンス

このような現状のなかで、前述した北九州市の実証実験のCEMSの制御方式は、米国をはじめ海外の専門家から見ても、世界で最高レベルのデマンドレスポンスであると評価されている。

米国の場合は電気を切るといっても、実際に切るのではなく、負荷をシフトする、すなわち、今、「洗濯機や乾燥機、食洗機などを動かさないでください」や、プールのある家には電力消費の大きい「プールの水の循環を止めてください」というような要請がされている。つまり、夏にエアコンを切るというようなことはあまり実施されていないのが現状なのである。


▼ 注4
輪番停電:家庭や企業の消費電力が、電力会社の電力供給能力を上回ってしまう場合、大規模な停電が発生することが予想される。これを避けるため、電力会社が一定地域ごとに電力供給を順番に時間をずらして停止(停電)させて電力需要を抑えること。

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