[スマートグリッドにおける サイバーセキュリティの徹底解析!]

スマートグリッドにおけるサイバーセキュリティの徹底解析!─前編─

─欧米の最新動向と懸念されているセキュリティの課題─
2013/04/01
(月)

「スマートコミュニティ」の全体像と構成する要素

最初に、本記事で解説するスマートコミュニティの全体像と関連するセキュリティ(サイバーセキュリティ)の課題を整理すると、大きく、

〔1〕「スマートコミュニティ」の全体像とその構成領域

〔2〕国内外の機関・団体および主要なプロジェクトの文献調査

〔3〕現状のセキュリティ課題の調査

に分類できる(図4)。それぞれの内容については、次項以降、具体的に次のように解説していく。

図4 本記事で解説するスマートコミュニティの全体像とセキュリティの課題

図4  本記事で解説するスマートコミュニティの全体像とセキュリティの課題

〔1〕「スマートコミュニティ」の全体像とその構成領域

現在、スマートグリッドについては、個別に議論や検討、実証実験などが行われている段階であり、いくつかの国家プロジェクトが具体的に展開されている段階である。ここでは、スマートグリッドの具体例として、日本のスマートハウス、スマートビルディング、スマートカーに関して、電力網と情報通信網の流れに注目し、筆者が所属する「サイバーディフェンス研究所」(CDI:Cyber Defense Institute)がスマートグリッド・サイバーセキュリティに関する活動で得られた情報や知見をもとに解説する。

〔2〕国内外の機関・団体および主要なプロジェクトの調査

次に、CDIが、スマートグリッド・サイバーセキュリティに関する活動を通して、「スマートコミュニティの全体像」に相当する実証プロジェクトを調査した結果を簡単に解説する。

〔3〕現状のセキュリティ課題の調査

〔2〕の調査の過程において把握できたことを示しながら、最初に作成した「スマートコミュニティ」の全体像に照らし合わせた形で、現時点で見えている「セキュテリィの課題」を整理して解説する。

スマートコミュニティの全体像およびその構成領域

まず、スマートコミュニティのどこの領域が、サイバーセキュリティと関連する部分なのかを理解するために、最低限必要な基礎知識として、図5に示すスマートコミュニティの全体像とその構成領域を説明する。

図5 スマートコミュニティの基本構成例

図5  スマートコミュニティの基本構成例

〔出所 CDI作成〕

「スマートコミュニティ」とは、図5に示すように、

  1. 図5の中央に示す最適化され電力網(スマートグリッドのコア)環境に、
  2. 図5の下段に示す通常の電力システムや太陽光発電、風力発電などの再生可能エネルギーなどを含む、多様化した形態の電源と、
  3. 図5の上段に示すスマートハウスやスマートカー、スマートビルディングなどの多様な需要家が複合的につながった「地域社会システム全体」

を包括した呼称である。

とくに、「スマートコミュニティ」という用語は、日本の経済産業省が使用し始めたことによって、国内で多用されるようになったが、これに対して、諸外国では「スマートシティ」という言葉が同義として使用されることが多い。

ここでは、「スマートコミュニティ」を構成し、数のうえからも最も多くなる「スマートハウス」(Smart House)におけるシステムの基本構成例を見ていくこととする(図6)。

図6 スマートハウス概念図

図6  スマートハウス概念図

AMI:Advanced Metering Infrastructure、電力事業者のサーバと家庭のスマートメーターとの間の通信基盤。
DSMシステム:Demand Side Managementシステム、需要家側管理システム。
DRシステム:Demand Responseシステム、電力の需要制御。
〔出所 CDI作成〕

図6に示すように、スマートハウスとは、ICT(情報通信技術)を活用し、家電機器や住宅設備機器、家庭用発電機、蓄電池、また電力・ガス・水道などの各種スマートメーター系機器等をネットワークにつなぐことによって、統合的な制御を可能とした住宅のことである。

すでに、電気メーカーや住宅メーカーなどの複数の企業からさまざまなHEMS(家庭内エネルギー管理システム)関連商品が提供されているが、図6はこれらのHEMS製品を使用して家庭内の各機器を接続し、構築したスマートハウスの構築例となっている。

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