[期待高まる「洋上風力発電」とNEDOの戦略!]

期待高まる「洋上風力発電」とNEDOの戦略!≪前編≫ ―稼働した日本初の「銚子沖」と「北九州市沖」の実証実験をみる―

2013/09/01
(日)
SmartGridニューズレター編集部

洋上風力発電はいつ頃から登場したか?

ここまで、洋上風力と陸上風力の大まかな違いを見てきたが、洋上風力発電はいつ頃から登場したのだろうか? 国際的視点から見てみよう。

洋上風力発電方式の登場は欧州からであった。欧州では1990年代から、いろいろな洋上風力発電の実証研究などが進められ、2000年頃から実用化が開始されている。

一方、日本における洋上風力発電については、いろいろな見方があり、一般にオフショアとも言われるものがそれに該当する。

オフショアとは洋上風力発電、またはオフショア風力発電(Offshore Wind Power)のことで、主に海洋上における風力発電のことを指している。また、ニアショア(Near-shore)とは、陸に近いところで行う風力発電を指している。実は、日本でも陸に近いところ(ニアショア)ではすでに実用化されている。

具体的には、表5および図6の写真に示すように、山形県の酒田港(2004年1月開始、水路部)、北海道の瀬棚町(せたなちょう。港内に設置。2004年1月開始)、あるいは茨城県の神栖市(かみすし。海岸から50m程度に設置。2010年7月開始)などである。

表5 日本で商用サービスを開始している洋上風力発電所(いずれも着床式)

表5 日本で商用サービスを開始している洋上風力発電所(いずれも着床式)

〔出所:各種資料を基に作成〕

図6 日本の洋上風力発電(ニアショア)の導入実績と陸上風力発電の導入実績

図6 日本の洋上風力発電(ニアショア)の導入実績と陸上風力発電の導入実績

〔出所 NEDO「洋上風力発電の取組について」、2013年7月16日〕

これらの風力発電は陸からすぐのところにある風車であり、これらは、日本の洋上風力発電のはしりとも言えよう。

日本初の本格的な沖合の洋上風力発電の登場

〔1〕日本で初めての本格的な洋上風力発電

このような日本の動きはあったが、前述したように、千葉県・銚子市の沖合約3kmの海域(2013年3月稼働開始。2.4MW)、福岡県北九州市沖約1.4kmの海域(2013年6月稼働開始。2MW)などに設置された、NEDOの実証研究が、日本初の本格的な沖合の洋上風力発電となった。

日本の再生可能エネルギーとして、今後、風力発電が大量に導入されていくことが予測されるが、これまでは、設置しやすい陸上風力発電から導入されてきた。その次は、立地条件や技術の進歩、政府の再生可能エネルギーの有効活用の面からの取り組みとその予算を計上するなどの背景もあり、風況のよい沖合に設置していくことが重視されるようになってきた。

風力発電自体は、国際的に見ても陸上でかなりの実績がある。日本でも2012年度の総設備容量で約1900基(総発電容量:約264万kW)が設置されており、現在、世界的に導入が進んでいる再生可能エネルギーと言える。

また風力発電は、他の再生可能エネルギーと比較して、発電コストが低い(後出の図7)という特徴がある。洋上風力発電のコストについては、政府の国家戦略室の「コスト等検証委員会報告書(2011年12月)」で試算され、図7、図8のようになった。

陸上風力と洋上風力の発電コストの比較

ここで、図7、図8を見ながら、陸上風力と洋上風力の発電コストの比較をもう少し詳しく見てみよう。

〔1〕陸上風力の発電コスト

図7に示す陸上風力については、立地条件によって建設コストが異なるが、電力会社の系統(電力システム)の制約もなく建設コストが安いケースなどの条件がそろったケースでは、2010年モデルプラントで10円/kWh程度、2030年モデルプラントで9円/kWh程度(割引率3%注2、設備利用率20%、稼働年数20年)と、原子力や石炭、LNG(液化天然ガス)と同等の発電コストになりうると試算された。

図7 コスト等検証委員会による主要電源のコスト比較

図7 コスト等検証委員会による主要電源のコスト比較

〔出所 資源エネルギー庁「再生可能エネルギーの拡大」、平成25年6月27日〕

〔2〕洋上風力の発電コスト

図8の洋上風力については、資本費を陸上風力の1.5〜2倍と見込み、2010年モデルプラントで9.4〜23.1円/kWh、2030年モデルプラントで8.6〜23.1円/kWhと試算された(割引率3%、設備利用率30%、稼働年数20年)。

図8 風力発電〔陸上・洋上(着床式)〕の発電コスト(2010年・2030年)

図8 風力発電〔陸上・洋上(着床式)〕の発電コスト(2010年・2030年)

〔出所 エネルギー・環境会議 コスト等検証委員会「コスト等検証 委員会 報告書」、平成23年12月19日、 http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/pdf/20111221/hokoku.pdf

洋上風力は、今後のイノベーション次第では、コスト低下も期待できる。なお、洋上風力には海底に直接基礎を設置する「着床式」のほかに、海に浮かぶ浮体を基礎として係留等で固定する「浮体式」があるが、今回の試算の前提として、浮体式については、コスト算定に必要なデータが不足しているため除外した。〔http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/pdf/20111221/hokoku.pdf

これに対して太陽光発電は、同じコスト等検証委員会において、30.1円/kWh〜40円/kWh程度と試算されており、日本においても風力発電は、再生可能エネルギーの中では発電コストが低くおさえられるエネルギーと言えるのである。

前述したように、日本の風力発電は、すでに陸上でかなり豊富な実績があり、成熟した技術体系も整備されている。加えて設備利用率が高い(太陽光発電は日中しか発電しないが、風力発電は夜間も発電するため、設備容量当たりの発電量が大きい)ということで、発電コストが低くなっており、こうしたところが風力発電の魅力となっている。


▼ 注2
割引率:割引率とは、長期的な投資効率を評価する等の目的で、将来の金銭的価値を現在の価値に割り引く(換算する)際に用いる利率を1年あたりの割合として示したもの。

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