次世代タクシー
トヨタ自動車は、次世代タクシーコンセプト「JPN TAXI Concept」(写真3)を展示していた。国土交通省の「標準仕様ユニバーサルデザインタクシー認定要領」注2の考え方に適合しており、2020年の東京オリンピックの際に市場投入されることが期待される。
このタクシーは、車輛としてはコンパクトながら、ゆとりある室内空間を実現している。また、大開口電動スライドドアに、低いフロア地上高と段差のないフラットなフロアが相まって優れた乗降性を実現しているので、子供や高齢者も楽に乗り降りできるよう配慮されている。さらにタクシーの走行パターンに最適な、優れた環境性能と経済性をもつ新LPG(液化石油ガス)ハイブリッドシステムを採用している。
利用者視点では、“おもてなし”の客室デザインに、ユニバーサルデザインを優しくモダンに表現。大型モニター(写真4)には、行先までのルートや料金目安といった顧客の知りたい情報を表示でき、空調や照明とともに快適な移動空間を提供している。
次世代の車両アクセスシステム「ACAS」
オムロンオートモーティブエレクトロニクスは、次世代カーアクセスシステムとして、スマートフォンを使用し、離れた場所からエンジン始動やエアコン操作などができるシステムを展示していた(写真5)。
次世代の車両アクセスシステム(ACAS:Advanced Car Access System)は、従来のようにキーから車両に一方的に情報を送るだけではなく、車両とキーの間で双方向に情報をやり取りして、離れた場所からでも車両の状態を把握することができる。車内温度や盗難防止装置の情報などの情報も確認でき、さらにプラグインハイブリッドや電気自動車などの充電情報も取得可能となる。
ACASを使えば、スマートフォンから直接操作(Bluetooth)ができるので手軽に利用することが可能になる。
今回の展示では、車両保有者が車両ゲートウェイを利用することで、車両ゲートウェイと自動車のワイヤレスキーシステム間を最大距離300mで同社独自仕様の900MHz帯の通信で接続し、このゲートウェイと10mの距離でBluetoothを介してスマートフォンと接続することで(写真5)、車両保有者は自らのスマートフォンによって、キーレスエントリー注3、パッシブエントリー注4、イモビライザー注5、リモコンエンジンスタータ注6を利用することが想定されている。
スマートハウスと自動車を連携した未来の住宅構想
東京モーターショーに併設されたSMART MOBILITY CITY 2013では、積水ハウス、東芝、本田技研工業の3社が合同ブースにて、ホーム・マネージメントの機能を拡大して、家族の健康管理や医療介護・見守りといった、安心と快適さを提供する未来の住宅構想を発表した。その一端として、最新のセンシング技術を活かした新サービスを披露し、未来の「SLOW & SMART」や、電池の活用による再生可能エネルギーの安定供給やEVの充電管理など、スマートコミュニティにおける住宅とモビリティのつながりを展示した。
また、究極のクリーン性能に加えて、クルマから家庭への外部給電(写真6)という新しい価値を生み出す燃料電池電気自動車「FCXクラリティ」も、今後のスマートハウスに求められるエネルギーとして注目を集めていた。
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2011年に開催された東京モーターショーでは、同年3月に発生した東日本大震災の影響もあり、EVなどをエネルギーとして利用する展示が目立っていたが、今回の東京モーターショーでは、EVや燃料電池自動車がスマートグリッドと連携することで、確実に社会インフラとして実用化へ向かっているという展示内容が目立った。
また、情報インフラの視点においては、スマートフォンの有効活用を想定した製品展示や、次世代タクシーに見られるような利用者に必要なプラットフォームの提供などによって、自動車が「安心・安全」であり利便性がある商品として展開されていることが確認できた展示であった。
▼ 注2
http://www.mlit.go.jp/common/000205870.pdf
▼ 注3
キーレスエントリー:鍵を鍵穴に差し込むことなく、自動車の扉の施錠・解錠ができる装置。
▼ 注4
パッシブエントリー:キーレスエントリーシステムを進化させたもので、スマートキーを持ったユーザーが車両に近づくとドアやトランクが自動的に解錠され、車両から離れると自動的に施錠される。
▼ 注5
イモビライザー:電子的なキーの照合システムによって、専用のキー以外ではエンジンの始動ができないという自動車盗難防止システム。
▼ 注6
リモコンエンジンスタータ:遠隔操作(リモコン)で自動車のエンジンを始動・停止させる装置。