スマートメーターからのパケットの大きさ
一軒の家庭のスマートメーターからMDMSに送信される1日分のパケット(電力使用量などのデータ)は、30分ごとに送られる30分値なので、24時間で48パケット送信されることになる〔1日は24時間なので、30分値は48パケット(=24時間÷0.5時間)〕。
この1日分の48個のパケットが連結して送られるが、その大きさは合計で1,920バイト程度である。これが東京電力の場合2,700万台のスマートメーターがあるので、
- 1日では、1,920バイト×2,700万(=1,350,000万バイト=518億バイト=51.8Gバイト)
- 1年では、1,920バイト×2,700万×365日〔=1892.2Gバイト≒20T(テラ)バイト〕ものビッグデータとなる。それを5年分蓄積(20T×5年=100テラバイト)することになる。
以上、東京電力のスマートメーターシステムにユニケージ開発手法を適用して構築を行っている内容をみてきたが、ユニケージ開発手法を採用した「営業料金システム」がいかに高速に、安価に実現できるかが判明した。
次に、このようなスマートメーターシステムが稼働する電力自由化時代の課題を簡単に整理してみよう。
スマートメーターシステムと電力自由化時代の課題
〔1〕電力自由化時代と重要な「イコールフット」
スマートメーターシステムの実現とともに、これまでの10電力会社による電力の地域独占体制が崩れ、電力の自由化(小売の自由化)が開始されると、例えば東京電力のユーザー(契約者A)は他の電力会社と契約できるようになる。また他の電力会社から東京電力と契約を結ぶユーザー(契約者B)も登場する。
東京電力との契約者AがX電力会社に、あるいは新規参入(契約者B)のYという新電力会社に契約を切り替えたとき、サービスのメニューや料金体系などが異なってくるため、その調整が必要となってくる。
しかし、これらの予測される事態を、既存の10電力会社や新規参入の新電力との間でオープンに公平に行うには、個々の電力会社などの努力だけでは困難である。
また、10電力会社のスマートメーターシステムのコンセプトは、現状では必ずしも同じ方向性をもっているとは言い難い。さらに電力の自由化とともに、従来の10電力会社の地域独占体制が崩壊することも明白となっている。
そこで、電力自由化時代には「イコールフット」(Equal Foot、同等の条件)が原則となる。すなわち、既存の電力会社も新電力も、これから新規参入する事業者も、みんな公平なルールでデータにアクセスできるようにし、公平にビジネスが展開できるようにすることが重要となる。
〔2〕経済産業省:「制度設計ワーキンググループ」で議論を開始
そこで、経済産業省では、2013年7月に電力システム改革小委員会の中に制度設計ワーキンググループを設置注7し、今後必要とされるさまざまな議論が開始されている。
この背景には、
(1)2013年2月に「総合資源エネルギー調査会総合部会電力システム改革専門委員会報告書」および電力システム改革の工程表がまとめられ、図4に示すように、
- 広域系統運用の拡大(2015年目途)
- 電気の小売業への参入の全面自由化(2016年目途)
- 法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保、電気の小売料金の全面自由化(2018〜2020年目途)
などの大局的なロードマップが策定されたこと注8、さらに、
(2)2013年4月には「電力システムに関する改革方針」の閣議決定等において、遅くとも2020年までに実現すべき電力システム改革の工程や手順の基本的な方向性が示されたこと注9
などがある。
したがって、今後、この基本的な方向性に沿って、電力システム改革は現実的なスケジュールの下で着実に進められていくことになる。このため、具体的な制度設計注10に関する検討・審議を行うため、電力システム改革小委員会の下に「制度設計ワーキンググループ」が設置されるに至った。
この制度設計ワーキンググループには、審議が中立的に行われるよう、有識者以外にも、電力会社、新電力会社などの委員も参加している注11。
図4 電力システム改革の工程表
〔3〕世界が注目する東京電力の今後の展開
東京電力のスマートメーターシステムにおける新・営業料金システムは、2015年2月から一部地域での試験を開始する予定となっており、本格的な稼働は、2015年の7月を目標としている。ただし、スマートメーターの導入が2014年4月から開始されるため、通信システムも2014年4月から運用開始となる(この時点ではまだスマートメーターは、既存の電力メーターと変わらない機能で動作している)。
電力の自由化を間近に控えて、同時にスマートグリッドの中核的なスマートメーターシステムの構築や、福島第一原子力発電所事故の復興作業と廃炉の取り組みなど、二重、三重の課題を抱えた東京電力が、今後、競争が激しくなると予想される新しい電力市場で、どのようなビジネスを展開するか、またどのように業界をリードしていくのか、世界から注目されているところである。
(終わり)
◎取材協力
▼ 注8
http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denryoku_system_kaikaku/report_002.html
▼ 注9
http://www.meti.go.jp/press/2013/04/20130402001/20130402001-2.pdf
▼ 注10
制度設計:新しい制度を作る、あるいは現行制度を改善する場合に、その目的や対象、事業内容、必要な組織、運営の仕方などをまとめた計画のこと。