1990年から始まった英国の電力自由化-----日本と同じ課題に直面
1999年には家庭も含めて完全自由化へ
今回、なぜ、英国の事例を選んだかと言えば、ICT戦略およびスマート社会への取り組みに関して、英国は欧州の中でも先進的存在だからである。
例えば、英国の文化・メディア・スポーツ省(DCMS)※1によると、超高速ブロードバンドサービスの普及率は欧州主要5カ国(英国、ドイツ、フランス、イタリア、スペイン)の中でトップクラス。英国政府は、民間投資だけでは整備が見込めないエリアも含めて、2017 年までに全世帯・事業所の95%を24Mbps(下りの伝送速度)以上の超高速ブロードバンドでカバーする「超高速ブロードバンド整備計画」を推進している。
また、1990年という早い時期から電力自由化に着手し、1999年には家庭用を含めたすべてのユーザーが電力をどこからでも自由に購入できるようになった。
社団法人 海外電力調査会の情報によると、英国は1990年に国有電気事業者の分割・民営化を実施し、それまで発電と送電を独占していた中央電力発電局(CEGB)※2を、発電会社3社と送電会社1社に分割して国営から民営へ移行させた。また、12の国有配電局も民営化し配電会社となった。
※1 DCMS:Department for Culture, Media and Sport
※2 CEGB:Central Electricity Generating Board
日本の現在と同じような状況が
同取り組みの果、現在、日本国内で起きている状況と同じように電気事業への新規参入が相次ぎ、2015年9月の時点で
- 発電会社:149社
- 電力小売会社:156社(ライセンス所有数)
が激しい競争を繰り広げているという。
ユーザーの立場からすれば、料金メニュー数が増大することは選択肢が増えたことになるので、本来ならありがたいことだが、デメリットも発生している。メニューの増大とともにメニュー内容が複雑化し、どのメニューを選択すればよいのか困惑するケースが多くなってきたのだ。
このような課題に対して、英国ではどのような対策が実施あるいは検討されているのだろうか。海外電力調査会によると、英国の行政当局は、料金比較が容易となるよう、各社が提示する料金メニューの数を制限したり、料金メニューの定型化を指導したり、その需要家に最も適した料金メニューを推奨することを義務づけたりする対策を打ち出している。