ビジネスと課題
〔1〕制度面の課題
rimOnO(リモノ)は、政府が推進する「超小型モビリティ」注5を意識して開発されているが、制度面での課題がある。rimOnOが目指す、女性や高齢者あるいは車好きでない人まで、より多くのユーザーに利用してもらうためには、現行の「超小型モビリティ制度」注6は走行地域限定(地方公共団体が指定した場所のみを走行する)という制度面での壁があり、2人乗り低速車に対する制度の整備が必要となる(表3参照)。
表3 車両カテゴリー比較
出所 リモノ記者発表資料より
「欧州では、原付免許で14歳以上が運転できる“L6e”注7という制度があり、これと同等の“日本版L6e制度”の早期導入を要望し、提言していきたい」(伊藤氏)。
欧州L6e制度は、
- 車両重量350kg以下
- 設計最高速度45km/h以下
- 最大連続定格出力4kW以下
- 定員2名(マイクロEVのカテゴリー)
の条件がそろった超小型電気自動車を言い、すでにフランス、イタリア、スペインなどで導入されている。
〔2〕開発資金やモーター、バッテリーの調達
制度以外の課題としては、量産モデルを見据えて、ベンチャーキャピタルや事業会社などからの出資を要望しており、相談中の案件も進んでいる。これらと並行して、2016年6月にはクラウドファンディング注8の募集を予定している。
また、モーターとバッテリーの調達も今後の課題としている。モーターについては、インホイール化を前提とした48V、2つで5kWのもの、バッテリーについては4kWhで、高エネルギー密度で低価格のものをそれぞれ検討中である。
今後の展開はどうか
rimOnOは、日本版L6e制度が導入されるまでの暫定モデルとして、「1人乗り・ミニカー規格」で市場投入する。2017年夏頃に初代モデル市販化を目指す。目標販売価格は1台あたり100万円で、購入補助を除いて50台を目指すとしている。
今回発表されたコンセプトモデルの2人乗り市販モデルについては、先行的に協力自治体(相談中案件あり)との間で実証実験を行い、日本版L6e制度が導入され次第市場投入していく。最終目標価格は1台あたり40万円前後で、例えば1,000台/月ベースを目指す。
先に発表された「エネルギー革新戦略」においても、COP21のパリ協定に沿ったCO2の削減が必至であり、環境にやさしい乗り物の登場は大いに期待される。
細道を走行でき小回りが利いたり、集合住宅でシェアができたりする乗り物の登場は、「街づくりそのものにもインパクトを与える」と伊藤氏は語る。
日本発の超小型電気自動車が、欧米の街で楽しく走っている様子を見てみたい。
▼ 注5
超小型モビリティとは、自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1〜2人乗り程度の車両を言う。
▼ 注6
超小型モビリティ制度:国土交通省では、超小型モビリティについて、公道走行を可能とする認定制度を創設するとともに、地方自治体、観光・流通関係事業者等の主導による超小型モビリティの先導・試行導入の優れた取り組みを重点的に支援する補助を実施している。
http://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr1_000043.html
▼ 注7
欧州連合では、“Quadri-cycle”と呼ばれる一般の乗用車より軽量の四輪車を含めた二輪車、三輪車の型式認可に関する枠組み指令2002/24/EC を制定し、“Light Quadricycle L6e”と“Heavy Quadricycle L7e”の二種類をUN/ECE/WP29の「車両構造に関する統合決議」におけるL6、L7とほぼ同様の内容で定義している。
UN/ECE/WP29の「車両構造に関する統合決議」とは、二輪車、三輪車についての定義「CategoryL」の中でL6、L7という四輪車を定義し、車体質量、設計速度、動力源の排気量、出力等で区分しているもの。
UN/EC/WP29:United Nations Economic Com-mission for Europe Working Party 29、国連欧州経済委員会の第29作業部会
▼ 注8
クラウドファンディング:Crowd-Funding。群衆(crowd)と資金調達(funding)を組み合わせた造語。不特定多数の人がインターネットなどを経由して他の人々や組織に財源の提供や協力などを募ること言う。