[連載]

タブレットとクラウドで既存の発電所を効率化-東京電力・袖ケ浦火力発電所におけるICT化戦略をみる(後編)-

2016/06/08
(水)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

≪2≫現地取材から見た巡視点検と効果

〔1〕現地における巡視点検作業の例

地中30m程度まで埋設されているLNGタンク(地下タンク)には、-162℃の極低温のLNGが貯蔵しされている。このため、地下に埋設されたLNGタンクの周りには、60~62℃の温水を流して、LNGタンクの周りの地面が凍らないようにしている。

写真2は、その温水の流量監視計の流量値(例:13m3/h)と温度(例:60℃)の値をタブレット入力にしているところである。LNGタンク内の液体LNGの温度が-162℃もあるため、地中に霜柱が発生して土を盛り上げ、LNGタンクを変形させてしまうのを防止しているのだ。

写真2 温水の流量と温度のデータをタブレットへ、ペン入力(データはリアルタイムでクラウドへ送信)

写真2 温水の流量と温度のデータをタブレットへ、ペン入力(データはリアルタイムでクラウドへ送信)

出所 インプレスSmartGridニューズレター編集部 撮影

 この他、LNGタンク周りの霜を溶かした水や、湧き出てくる地下水をくみ上げた水の流量(前日の流量との比較も可能)なども測定されている(これらの水は海に流されている)。この他、LNG基地では、300カ所を超える巡視点検作業が行われている。

〔2〕巡視点検作業とその効果

(1)巡視点検作業の内容

これまで紹介してきたLNGタンク関連の巡視点検作業は、2015年12月から防爆型タブレットで巡視点検作業を開始し、効率的な点検項目の選択や巡視作業の順路など検討が行われ、現在その作業内容はほぼ完成に至っている。

 袖ケ浦火力発電所のLNG基地の巡視点検作業用には、タブレット4台が導入されている。タブレットでは、点検データの記録の他、タブレットのカメラで写真や動画(ムービー)の送信や音声会話も可能なため、問題が発生した場合はリアルタイムにクラウドにアップした映像で、現地事務所と対応策などが検討できる。

その巡視点検作業は、屋外の作業が80%程度(残りは室内作業)の比率になっており、その作業は、次のように行われている。

①1日1回4チーム(各エリア1チーム:1~2名程度)で点検作業を行う。作業時間は、朝8時30分~10時の1時間30分。

②作業エリアは、4つのエリアに分けて実施されている。具体的には、前出の図2の構内エリアの①Z地区と②W地区、隣接地区の③LNGタンク周りと④タンクの外回りにある付属設備、の4つエリアとなっている。

(2)タブレットによる電子化の効果

前述したように記録ミス(入力ミス)が少なくなったこととともに、決済が捺印方式から電子決済に移行し、事務処理方法のカルチャーも改革できた。また、従来2時間程度かかっていた巡視点検作業が1時間30分と30分短縮された。これは、ICTプロジェクトが目標としている75%程度の達成率であり、引き続き改善の検討が行われている。

さらに、クラウドとの連携によって問題発生時に、リアルタイムに現地事務所と連携して対応できるようになった、ことなどがあげられている。

また、1年を通してデータの蓄積が行われるため、今後、LNG設備の季節的な変動も見られるようになるため、予兆管理などにも大いに効果が上がるものと期待されている。

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