東京電力 カスタマーサービス・カンパニーバイスプレジデント 佐藤梨江子氏に聞く! 総合エネルギーサービス企業へ脱皮する 東京電力の電力小売全面自由化への戦略《後編》
2016年4月1日 0:00
いよいよ2016年4月1日から電力小売全面自由化がスタートする。
日本最大の電力会社である「東京電力」は、同自由化に備えた新体制とともに、4月1日から提供する具体的なサービスメニューと料金体系を次々に発表している。さらに2017年4月に予定されているガスの小売全面自由化後のガス市場への参入も表明し、電力企業から総合エネルギーサービス企業へと脱皮しようとしている。
前編(2016年3月号)では、新生「東京電力」の新体制とそれぞれの役割、中部電力と共同で設立した燃料・火力発電事業会社「JERA」(ジェラ)の設立の背景などについて解説した。後編では、同社のガス市場や新たなエリアでの販売戦略と今後のロードマップについて、東京電力(株) 執行役員 カスタマーサービス・カンパニー バイスプレジデント 佐藤 梨江子氏にお聞きし、紹介する。(聞き手:インプレスSmartGridニューズレター編集部)
ガス市場への参入:総合エネルギーサービス企業へ
─編集部:最近、電力会社は「電気とガス」のセット販売を、ガス会社は「ガスと電気」のセット販売をすると、相次いで発表されています。そこで、前編(2016年3月号)で説明された御社のE&G事業本部のガス事業について、さらに詳しくお聞きしたいのですが。
佐藤:今後、前編の図1(日本の電力システム改革の全体像)に示されているように、来年(2017年)の4月にはガスの小売全面自由化が予定されています。当社は、都市ガスの小売販売にもぜひ参入したいと考えていますし、現在その準備を整えています。ガスのビジネスに参入すると、現在発表しているセットプランは、
「東京電力の電気」+「他社の料金のセット割」+「他社のサービス(Tポイントなど)」
という3点セットのプランですが、これに東京電力のガスをプラスすると、
「東京電力の電気」+「東京電力のガス」+「他社の料金のセット割」+「他社のサービス(Tポイントなど)」
というように、4点セットのサービスプランが提供できるようになります。
今後、家庭用のガスを販売することになると、東京ガス様が販売している「13A」という規格にガスの熱量を調整して商品化する必要があります(図1)注1。
この13A規格の都市ガスをつくるためには、熱量調整の設備が必要になります。そこで、現在は、東京ガス様が作った13A規格のガスを私どもが購入し、それを販売しています。当社がどれだけ13A規格のガスを調達できるか、そこがビジネス上の鍵になります。
─編集部:ガスと電気の両方を販売するというのは、海外では普通のことで、例えば、米国にPG&E(Pacific Gas and Electric)のような大手がありますよね。
佐藤:おっしゃる通りです。もちろん国外のケースはいろいろ研究しています。
自由化された国の事業者のほとんどは、電気とガスの両方を扱っています。例えばフランスのEDF注2や英国のセントリカ注3などもそうです。ガスなのか電気なのかというような境目はもうなくなってきています。
私どもとしても、今後は、総合エネルギーサービス企業を目指してビジネスを進化させていきたいと考えています。そして、電気を販売する、ガスを販売するということではなくて、お客さまにとってどのようなエネルギー構成にして、どのように使うと一番メリットが出るのか。今までに培ってきたエネルギー利用のノウハウをフルに活用して、お客さまの立場に立って考えて提案していくことが重要だと思っています。
▼ 注1
13A規格:ガスは、「都市ガス」7グループ13種類、および「LPガス」に分類されており、東京ガスは「13A」規格の都市ガスを一般家庭に提供している(図1参照)。
http://home.tokyo-gas.co.jp/userguide/shurui.html
http://home.tokyo-gas.co.jp/userguide/netsuryou.html
▼ 注2
EDF:Electricite de France、フランス電力会社。
1946年に国有のフランス電力公社を設立。2005年以降は、部分的に民営化されるとともに、送電部門、配電部門が子会社化された。英国、イタリアなど欧州を中心に海外に進出。ガス事業にも乗り出している大手の電気・ガスエネルギーの会社。
▼ 注3
セントリカ:Centrica。英国の旧国有ガス会社British Gas。
