≪1≫電力システムへのIT・IoTの導入
活発化するスマートグリッドやマイクログリッドの導入を背景に、電力システムへITやIoTを導入する動きが活発化している。例えば、すでに米国のSGIP(Smart Grid Interoperability Panel、スマートグリッド相互運用性パネル)では、「エネルギーIoT」とも呼ばれる「OpenFMB」(Open Field Message Bus、オープンフィールドメッセージバス、注1の標準化に向けて活発な取り組みが推進されている。
また、日本では、2016年1月から太陽光発電などの分散エネルギー資源をIoTによって統合して活用する新しい電力システム「VPP(Virtual Power Plant、仮想発電所)」への取り組みがスタートし、活発な活動が展開されている注2。
しかし、このような次世代の電力システムへの取り組みとともに、すでに稼働し電力を供給している既存の火力発電所などの電力システムへ、ITやIoTの導入が進まなければ、トータルに電力システムの効率を上げることはできない。
写真1 東京電力・袖ケ浦火力発電所の全景(東京ガスも含めたLNGタンクが並ぶ)
2本の煙突の手前の建屋:右から左へ、1号機、2号機、3号機、4号機と並んでいる。
出所 東京電力フュエル&パワー「袖ケ浦火力発電所の概要」2016年4月より
≪2≫東京電力のICT・クラウドを活用したデータの電子化
このような動きの中で、東京電力フュエル&パワーの千葉県・袖ケ浦市にある袖ケ浦火力発電所〔社員数:135名(協力会社含めると約300名)〕では、マイクロソフトのクラウドサービス「Office 365」注3を搭載したタブレットを活用して、発電所の業務効率を改善するICTプロジェクトが推進され、大きな成果をあげている。このICTプロジェクトの特徴は、前述した、スマートグリッド/マイクログリッドのような新しい電力システムではなく、既存の電力システムの業務効率化をアップさせている点が注目されるところだ。
(注1)OpenFMBとは、エネルギーに関する情報(データ)をやり取りするためのプロトコルである(詳細は、『インプレスSmartGridニューズレター』2015年12月号、2016年5月号参照)。このOpenFMBは、スマートグリッドやマイクログリッドなど電力システムに点在するさまざまなエネルギー関連機器などで生成されるデータを、それぞれの機器の仕様にとらわれることなくやり取りできるようにし、相互運用性(Interoperability)を実現するために開発されているプロトコルである。
(注2)詳しくは、『インプレスSmartGridニューズレター』5月号(インプレス刊)を参照。
(注3)Office 365クラウド:マイクロソフトのWordやExcelなどのOfficeを使用して作成した電子データを、クラウドと連携させ業務効率を向上させるクラウドソリューション。