[クローズアップ]

スマートハウスのプラットフォームを狙うNest LabsとGoogleの戦略

2014/08/01
(金)
SmartGridニューズレター編集部

Nest Developer Programと具体的サービス

〔1〕Nest Developer Program

Google傘下に入った後のNestによる大きな動きは、今年の6月に発表されたNest Developer Program(Nest開発者プログラム)である。その後、このプログラムの内容について、2014年6月26日、27日に開催されたGoogleによる開発者会議 Google I/O(グーグル・アイオー)でも詳しいプレゼンテーションが行われた。Google I/Oの初日に、”Nest for developers注7”(開発者のためのNest)というセッションが設けられ、ここにふたりの創業者が登壇したのである。

 

このNest Developer Programでは、第三者の企業や開発者がNestのサーモスタットや火災報知器と連携するためのAPI注8が発表され、同時に、Nest Developer Pro-gramの最初の提携企業と、その具体的なサービスが公表された。現時点で具体的なサービスとして公表されているのは表1のとおりである。
 
 
〔2〕IFTTT:サービス同士を連携させるツール
 
表1の提携サービスのうち、IFTTTの内容が少しわかりにくいが、IFTTTというのは “If This Then That”(もしこうであれば、その次にこうする)という言葉の最初のIFと残りの3単語の頭のTを取ってつないだサービス名である。IFTTTのサービスの特徴を一言で言えば、通常であれば連携していないサービス同士を簡単に連携するためのツールである。
 
最近では多くのサービスが、Nestのように、他のサービスと連携することを念頭においてAPIを公開している。そのためプログラミング経験がある人であれば、通常は連携していないようなサービス同士を連携させ、それぞれを個別で使う場合と比べて、より便利に使うことが可能になる。IFTTTは、このようなサービス連携を、プログラミングに関する知識がない人でも簡単にできるようにしたWeb上のサービスである。
 
IFTTTでは、主要なサービスを連携するための雛形(ひながた)があらかじめ用意されており、それらは「レシピ」と呼ばれて、公開されている。ユーザーは、この中から自分にあったものを探し、それを有効化するだけで、通常は連携していないサービス同士を連携することができるのである。
 
例えば図2は、実際に筆者が利用している設定画面のキャプチャである。ここに載せたものは、Googleの無料メールサービスであるGmail上で、重要なメールに星印をつけると、その内容がそのまま文書管理サービスであるEvernoteに送られ、保存されるというレシピである。
 
 
 
〔3〕製品のIFTTT対応化が進む
 
今回のNest Developer Programによって、NestはNest ThermostatとNest Protectの両方の製品をIFTTT対応にした。本記事執筆時点(2014年7月15日現在)でレシピの登録状況を調べてみると、Nest Thermostatは180以上、Nest Protectは100弱のレシピが登録されている。
 
具体的に見ると、例えばNest Thermostatで室温を計測していた結果、ある温度を超えたらメッセージを出すようなレシピ(図3)やNest Protectで一酸化炭素を検出した場合にメールを送るようなレシピ(図4)などが用意されていた。
 
 
 
 
このようにIFTTTがNest Developer Programを利用することによって、Nestの機器とユーザーが普段から利用しているWeb上のサービスを連携させやすくなる。
 
 
〔4〕Webカメラメーカー「Dropcam」も買収
 
Nest Developer Programの発表と時期が前後してしまうが、同社は今年の6月20日にホームセキュリティ用途などで使われていたWebカメラメーカーのDropcamを5億5,500万ドル(約555億円)で買収したことを発表した。ホームセキュリティ向けのWebカメラと言うと、Nestがこれまで扱っている製品のように、必要ではあるが普段は重要視されていない製品のひとつである。
 
Nestの製品群にWebカメラが加わることで、Nest Protectで提供していた家庭の安全への配慮というサービスが、より強化されることになる。また、今後、DropcamもIFTTTで連携できるようになれば、不在時に何かが映り込んだ場合にメールを送るなどの活用方法が実現できるようになる。

▼注7
 
▼注8
API:Application Programming Interface、あるソフトウェアやアプリケーションの機能を外部のアプリケーションから容易に利用できるようにするためのインタフェース。
 
◆図2 出所
 〔出所 著者作成〕
 
◆図3 出所
 〔出所 著者作成〕
 
◆図4 出所
 〔出所 著者作成〕
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