[クローズアップ]

スマートハウスのプラットフォームを狙うNest LabsとGoogleの戦略

2014/08/01
(金)
SmartGridニューズレター編集部

Nestプラットフォームの今後の展開

〔1〕プラットフォームの魅力とは
 
このようにして、Nest Developer Pro-gramによって、NestやGoogle単独では実現できなかった、家庭内、あるいは家庭周辺に関するさまざまな機器やサービスが、容易に連携できる仕組みが整えられたことになる。Nestが抱える人材を駆使すれば、これまでにはなかった洗濯機や照明機器などを作ることは難しいことではない。しかし、さまざまなインタビューにおいて、Nestの創業者らは自分たちがあらゆる製品を作ることはないと明言している。むしろNestとして、そしてGoogleとしては、第三者の機器やサービスがNestとつながる、ひいてはGoogleとつながることによるメリットのほうに重きを置いているはずである。
 
プラットフォームの魅力とは、単純に言えば、そのプラットフォーム上で使える機器やサービスの数である。仮にプラットフォーム自体が非常に魅力的な機能を備えていたとしても、使える製品やサービスの数が少なかったり、特定のメーカーの機器しか使えなかったりするような場合、多くのユーザーに使ってもらえる可能性は低くなる。GoogleはPowerMeterを展開していた際に、その点は十分に痛感しているはずである。
 
つまり、どんなにPowerMeterの機能が優れていても、提携しているユーティリティの数が少なければ、ユーザーが増えないということをすでに体験している。その体験を教訓とするならば、今回のNest Developer Programでは、幅広い、多くの提携企業を集めることに主眼を置いているはずである。
 
 
〔2〕ファンド「The Thoughtful Things Fund」の立ち上げ
 
そのような方針の一環として、GoogleはNest Developer Program の発表と同時期に、The Thoughtful Things Fund注9というファンドを立ち上げている。このファンドは、Googleのベンチャー投資部門であるGoogle Venturesと、Nestにも投資をしているベンチャーキャピタルであるKleiner Perkins Caufield & Byers(クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤーズ)によって作られたファンドである。
 
現時点で同ファンドの詳しい情報は明らかになっていないが、スマートハウス関連のベンチャーに投資をすることが目的となっている。本当に有望な企業があれば、Dro-pcamのようにNestやGoogleが直接買収する方が早いかもしれないが、このようなファンドを作ることで、Googleがこの分野に積極的であることを示す目的もあるだろう。
 
 
〔3〕新たな通信規格「Thread(スレッド)」の発表
 
また、2014年7月15日には、家庭内の機器を接続し、制御するための新たな通信規格Thread注10が発表された。この規格を取りまとめているThread Groupのプレゼンテーション注11を見ると、同団体の設立メンバーとしてSamsungやFreescaleなどとともに、Nestが入っている。さらに、同団体の代表をNestの製品マーケティングマネジャーのChris Boross(クリス・ボロス)氏が務めている注12
 
すでにWi-FiやZigBee、Bluetooth、Wi-SUNといった通信規格が主流となりつつあるなか、新たな通信規格を打ち出す意義や今後の展開については、現時点では不明確な部分も多い。しかし、スマートハウスのプラットフォームを狙うNestの意図を踏まえると、この動きは意義のある一歩だと見ることもできる。
 
Nest自身の動きも含め、今後、同社を取り巻く動きは、ますます勢いを加速していきそうである。
 
▼注10
2014年7月8日、ARM、Big Ass Fans、、Freescale Semiconductor、Nest Labs、Samsung、Silicon Labs とYale Security の7社は、家庭内における機器の接続性を向上させる目的で、Thread Group を設立。同グループは、ThreadというIPv6 対応の新たな無線通信プロトコルを提唱しており、普及を目指す。http://www.threadgroup.org/2014_07_Press_Release.aspx
 

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