公衆電源サービス「espotサービス」登場の背景
図1 espotサービス実証実験のサービスエリア
従来の電力会社のビジネスモデルは、家庭やオフィス、工場に電気を供給することが役割であり、その先は各需要家(家庭やオフィスなど)が電気を自由に使用することが大前提であった。しかし、最近は、スマートフォン(スマホ)やタブレット、ノートパソコンなどのモバイル端末を屋外に持ち出して利用する機会が増えたため、電気を屋外でも自由に利用できる環境が求められるようになった。例えば、社会現象ともなった『Pokémon GO』(ポケモンGO)の場合は位置情報サービスも利用するため、スマホの消費電力が急増し、外部バッテリー(モバイルバッテリー)を持ち歩いて対応する状況も生まれている。
このような背景から、すでに携帯ショップや一部コンビニ、コーヒーショップなどで充電サービスは提供されているものの、家庭やオフィスから出ると、まだ電気を自由に使える環境は整備されていない。
そこで、東京電力EPは、電力のシステム改革としてスタートした電力小売全面自由化を契機に、このような現状を解決し、「どこでも・だれでも・いつでも」電気を自由に使える新しいインフラサービスを目指して、公衆電源サービス「espotサービス注2」という充電スポットの実証実験を、東京都内の千代田区、中央区、港区、新宿区、江東区、目黒区など計36カ所でスタートさせた(図1)注3。
表1に、同サービスの実施期間や地域、東京電力ES、ソニービジネスソリューションおよび関電工の役割を示す。
表1 espotサービス(公衆電源サービス)実証実験(東京都内36カ所で実証開始)
出所 http://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2016/pdf/160822j0201.pdf
公衆電源サービス(espotサービス)の仕組み
写真1 espotカード購入の札(右)とespotカード〔左:5度数500円(税抜)〕
出所 編集部撮影
今回のespotサービス実証実験は、
(1)事前に購入したプリペイドカード(espotカード)による支払い(写真1)や
(2)またはQRコードをモバイル端末(スマートフォンやタブレット型端末など)で読み取るクレジットカード決済によって、
店舗や公共スペースなどに設置された専用の認証型コンセントを利用して、街中で気軽に電気を利用できるサービスである。これによって、外出時のモバイル端末の充電を容易に行えるようになる。
写真1は、店頭に設置されたespotカード購入の札(右)をレジに渡し、左側のespotカード〔プリペードカード、例:5度数で500円(税抜)〕を購入し、コンビニのイートインコーナーなどで充電できる仕組みである(基本は1度数20分100円)。
写真2(1)は、espotサービスのキーデバイスとなる認証型コンセントの正面写真とその利用方法を示したものである。写真2(1)の左側上には、携帯電話・スマホ充電用の①USBプラグ(DC5V、1.0A)があり、写真2(1)の左側下は②ノートパソコン用のACからの充電コンセント(AC100V、2A)がある。
espotサービスを提供する飲食店やコンビニにとっては、集客や顧客サービスの向上が見込めるとともに、同サービスの利用単価や時間を柔軟に設定できるため、利用者が充電目的で滞在することによって新しいビジネスが創出できる可能性もある。
また、写真2(2)は認証型コンセントに対して、購入したespotカードをかざしてタッチし、充電を開始する場合を、写真2(3)はスマホがQRコード読み取り、クレジットカード決済する場合(QR認証)を示している。
写真2 認証型コンセントの外観とespotカード/QRコード
出所 編集部撮影
充電用のUSBプラグとノートパソコン用の充電コンセントは、同時に利用することも可能である(写真3)。表2に、認証型コンセントの特徴を示す。
写真3 認証型コンセントからの充電:USBプラグ(上)でスマホを、交流100Vプラグ(下)でパソコンなどの充電を同時に充電可能。写真右はスマホ充電の例
出所 編集部撮影
表2 認証型コンセントの特徴
出所 http://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2016/pdf/160822j0202.pdf
▼ 注1
・http://www.tepco.co.jp/ep/notice/pressrelease/2016/1318501_8661.html
・http://www.tepco.co.jp/ep/notice/index-j.html
espot(エスポット)とは、「誰でも、“電気(energy)”を使える“場所(spot)”」の造語。
▼ 注3
espotサービス詳細