[特別レポート]

急浮上する電動車(EV・PHV)の調整力と3つの協調領域

― 再エネ・VPP時代に新ビジネスチャンスが到来 ―【JSCA主催「次世代自動車-インフラ設備インターフェースの国際標準化に関するワークショップ」】
2016/09/01
(木)
SmartGridニューズレター編集部

VPPの中での電動車の調整力に着目する

〔1〕電動車の蓄電池容量:2030年に4,400万kWへ

 このような中で、天候に左右されるため発電量が安定していない再エネを、系統電力に接続して安定的に利用するには、何らかの調整力が求められるが、この調整力の1つとして、大型の蓄電池を搭載している「電動車の充電機能や放電機能」(充放電機能)を利用して、電力系統を安定化させることへの期待が高まっている。

 次に、図1左側に示したVPP(仮想発電所)を構成するエネルギーリソースのうち、「電動車の調整力」に着目してその大きさ(調整容量)を見てみよう。

図1 IoTを活用した需要家側のエネルギー・リソース・アグリゲーション(VPP)

図1 IoTを活用した需要家側のエネルギー・リソース・アグリゲーション(VPP)

出所 http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/energy_resource/pdf/001_03_00.pdf

 経済産業省の予測注8では、2030年に、電動車(EV/PHV)は970万台(現状:11万4,000台)に達し、その電動車に搭載されている蓄電池容量は4,400万kW(現状:28万kW)と、現状の160倍にのぼると予測されている。

 図2に示すように、仮に、そのうちの10%が調整可能な蓄電機能とすると、電動車だけで440万kW(=4,400万kW×0.1)、すなわち大規模火力発電4基分の調整力をもつことになり、これによって、環境にやさしい再エネと電動車の相互の普及・促進が期待される。

〔2〕ワークショップの目的と役割

 しかし、実際に電動車の440万kWの調整力を現実にVPPとして利用できるようにするには、共通ルールとして次世代自動車(電動車)とインフラ(電力)設備のインタフェースに関する標準化の推進が必要となる。そこで、本ワークショップでは、検討メンバー(複数の業界から参加)として、自動車会社側からはトヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、三菱自動車の4社が、電力会社側からは関西電力、東京電力の2社が参加し、

(1)電動車の蓄電機能の電力系統への活用の考え方

(2)電動車活用の事例(簡易ユースケース)

(3)今後そのような機能を実現するうえでステークホルダー(関係者)が協調すべき標準化領域の特定

などについて、コンセンサス(合意)に向けた議論が行われた。


▼ 注8
経済産業省「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネスについて」、http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/energy_resource/pdf/001_04_00.pdf

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