ネガワット取引の具体的なイメージ
〔1〕ネガワット取引の類型
VPPビジネスやデマンドレスポンスと密接に関係する、ネガワット取引の具体的なイメージを見てみよう。
ネガワット取引のタイプ(これを「類型」と表現する)のうち、ここでは「小売電気事業者による他社需要家からのネガワット調達」(類型1 ②)の例を、図2を見ながらそのイメージ解説しよう。
ネガワット取引には、
(1)類型1:小売電気事業者が同時同量達成のために需要削減量を調達するもの
・類型1①:小売電気事業者が自社の需要家によって生み出された需要削減量を調達するもの
・類型1②:小売電気事業者が他の小売電気事業者の需要家によって生み出された需要削減量を調達するもの
(2)類型2:系統運用者が需給調整のために需要削減量を調達するもの
というように、大きく2つの類型に分類され、類型1にはさらに類型1 ①と類型1 ②が存在する。
〔2〕ネガワット取引の課題
図2(類型1 ②の例)では、発電Xが100を発電し、小売Xに渡すが、小売Xと取引をしている需要家Xは需要が80〔100の調達予定よりも20低い。つまりネガワット(節電)が20〕なので、小売Xはその20をアグリゲータ経由で小売Aに渡す。小売Aは、発電Aからの100とアグリゲータからの20を加えて、120を需要家Aに渡す、という流れであるが、図2の右に解説するように、(契約上の問題も含めて)いろいろな課題がある。このため、平成29(2017)年までに「ネガワット取引市場」が創設できるよう、ERAB検討会のネガワットWGで、ガイドラインの改定(例:ベースラインの基本的な考え方)などの検討が行われている。
図2 ネガワット取引のフロー(流れ)の例
出所 経済産業省「ネガワット取引の経済性等に関する検討会 概要」、2016年3月30日
ベースラインとは、DR(デマンドレスポンス)がなかった場合の電力消費量のことである。ネガワット取引で取引される需要削減量(ネガワット量)は、DRの要請がなかった場合に想定される電力消費量(ベースライン)と、実際の電力消費量との差分として算出される。このため、ネガワット取引を円滑にするためには、ベースラインの推計などに関する標準的な手法の確立が必要となる。