再エネ導入・拡大に向けてVPP構築実証事業をスタート
〔1〕構築事業費補助金(29.5億円)とその事業の内容
以上のようなダイナミックな動きに対応して、経済産業省は、3.11の東日本大震災後、従来の大規模集中型電源に依存した供給システムから脱却するとともに、急速に普及している再エネを安定的かつ有効に活用していくことを喫緊の課題と捉え、平成28(2016)年度予算案として29.5億円(新規)を組み、これまで述べてきたVPP注1の実証事業をスタートさせた。
具体的には、高度なエネルギーマネージメント技術によって、電力グリッド(電力網)上に散在している、
①再生エネ発電設備(創エネ)
②蓄電池などのエネルギー設備(蓄エネ)
③デマンドレスポンスなど需要家側の取り組み(省エネ)
を統合的に制御し、あたかも1つの発電所(仮想発電所)のように機能させるVPP実証事業を開始した。
このような「創エネ、蓄エネ、省エネ」を最適に組み合わせることによって、今後、再エネの導入を拡大していく。
〔2〕成果の目標:ネガワット取引市場の創設
VPP実証事業は、平成28(2016)年から平成32(2020)年までの5年間の事業を通じて、出力50MW以上のVPPの制御技術の確立などを目指し、再エネ導入の拡大を推進する。さらに、節電した電力量を売電できる「ネガワット取引市場」〔平成29(2017)年までに創設予定〕における取引を見据えたアグリゲータの機器制御技術の高度化を図っていく。
図3と図4に、VPP構築事業の事業イメージの例を示す。
〔3〕VPP構築事業/DR実証事業:事業テーマと事業者が決定
このような動きの中で、エネルギー総合工学研究所(補助金の執行団体)は、「VPP構築実証事業」について、
①「VPP構築事業(A事業)」と
②「高度制御型デマンドレスポンス実証事業(B事業)」
に関する間接補助事業者注2の公募を行い、その採択結果について、表2と表3に示す事業テーマ(表2 はA事業:7、表3 はB事業:19)と事業者名を公表した。
表2と表3からわかるように、電力やガス、通信、自動車、建設、電機、コンビニなどの、多彩な企業が参加し、推進している。
表2 「VPP構築事業(A事業)」の公募結果(2016年7月29日)
出所 http://www.iae.or.jp/wp/wp-content/uploads/2014/08/vpp_a_20160729.pdf
表3 「高度制御型デマンドレスポンス実証事業(B事業)」の公募結果(2016年6月28日)
出所 http://www.iae.or.jp/wp/wp-content/uploads/2016/06/vpp_b_20160628_r2.pdf
▼ 注1
用語の統一上、バーチャルパワープラントはVPP、ディマンドリスポンスはデマンドレスポンスあるいはDR、と表記して掲載している場合がある。
▼ 注2
間接補助:補助金の交付の対象となる事業を行う者に国が直接補助するものを直接補助といい、他の者(例:エネルギー総合工学研究所)を経由して間接的に補助するものを間接補助という。