IoT時代を迎えた機器接続の課題
すでに本誌8月号でレポートしたように、IoT時代を迎えて、現在、世界中でインターネットに接続されている端末の数は、150~200億台と言われており、4年後の2020年には500億台になるとされている。さらに、センサーに至っては2,100億個を超えるようになり、そのうちの50%近くは、人を介さない機器間の接続(M2M)になると予測されている注1。
このような端末やセンサーを接続するネットワークには、これまで、図に示す、近距離無線規格(無線PAN)であるBluetooth、ZigBeeなどのIEEE 802.15標準や、無線規格Wi-Fi(IEEE 802.11a/g/n標準)のネットワーク、さらに3GPP標準のモバイル網(3G、LTE)などが使用されてきた。しかし、今後、これらのネットワークで500億個ものIoT関連機器を接続するには、次のような課題も考えられる。
- 通信距離が短い(無線PAN)
- 通信モジュールの消費電力が高い
- 通信料金が高い(LTE)
- アクセスポイントの設置コストが高い(Wi-Fi)
図 IoT時代のネットワーク:LPWA (Low Power, Wide Area)
出所 https://www.ntt-west.co.jp/news/1606/160629a.htmlをもとに一部加筆修正
表 LPWAによるIoTネットワークの例(低価格、長距離、長寿命)
出所 各種資料をもとに編集部で作成
このような背景のもと、近年では、図の赤い楕円に示す、LPWA(Low Power, Wide Area)ネットワークと呼ばれる、LoRaWANやSIGFOX、Wi-Fi HaLow(表)などの「低価格」「長距離」「長寿命」(低消費電力)で、かつ免許不要なサブギガ帯(1GHz未満:日本は920MHz帯)の周波数帯を使用する、低消費電力広域網が開発され、急速に普及し始めている。
「免許不要帯のLPWA」か「免許要帯のLTE版LPWA」か
このような市場動向に触発され、モバイル通信規格を策定する国際標準組織の3GPPでは、リリース13(3GPPが発行する仕様書)において、表に示す、LTEベースのCat-M1(Category M1)の標準化を完了し、さらにNB-IoT(Narrow Band-IoT)の規格についても策定している。また、日本においては、まだサービスが開始されていないが、国際的に広く普及しているGSM(2G)ベースのEC-GSM-IoT規格も策定されている。
LTEベースの規格は、例えば通常スマートフォンなどで使用している20MHz帯の周波数を、(伝送速度は遅くなるが)1.4MHz帯や200kHz帯まで縮小し、通信モジュールの低消費電力化や通信範囲の拡張、通信料金の削減などを実現している。これによって、1セル当たり、Cat-M1は100万個以上、NB-IoTでは20万個以上の端末が接続可能になる。
IoT時代に入り、今後、「免許不要帯のLPWA」か「免許要帯のLTE版LPWA」か、両者の通信サービスの展開が注目されている。すでに中国のHuawai(ファーウェイ)は、3GPPの通信規格(NB-IoT)に準じた世界初の商用チップ『Boudica』をリリース注2している。これは現在、水道のスマートメーターに組み込んでフィールド試験が開始されており、その商用展開は2017年の予定としている。
IoTでの利用を目指した無線通信規格「LPWA」の登場、利用については、今後ますますの激戦が予想される。
▼ 注1
2016年7月14日、「インテル エネルギー×IoTフォーラム」におけるインテル代表取締役社長 江田 麻季子氏の講演より。