災害からの迅速な復旧に必要な危機管理システム
ここまで述べてきた、電気通信サービスの被害について、東日本大震災と阪神・淡路大震災を比較したものを表4に示す。
以上、東日本大震災による人的被害、家屋被害、電気・ガス・水道のインフラ被害、電気通信サービスの被害について、実際の数を見てきた。
ここから導き出されるのは、中央の管理システムと被災地のすべてのものとを結ぶ強固な(途絶しない)ネットワーク、そしてそのうえに構築される高度な危機管理システムがあれば、より迅速な大震災の復旧が行えたのではないかということである。
言い換えれば、災害からの復旧には、時々刻々変化する数多くのセンサーデータ、個人、企業、自治体などのデータおよび各災害地域の情報を集積し、管理し、高度な処理を行って、個別的な行動計画をリアルタイムで各個別の関係者に提供できる巨大クラウドシステムの構築が必要とされている。
これらに加え、東日本大震災においては、特に小規模FM放送局やインターネット電話(IP電話)、Twitter、FacebookなどのSNSが通信手段として活躍したほか、災害時優先電話として扱われた公衆電話も大きな役割を果たしたことも重要である。
被災地域における管理システムの要求は多種多様であり、時間とともにその内容は変化していく。被災地の実体験を通じてこの問題を整理するには、大災害の発生時点から、それぞれ時間の経過に沿ったフェーズに分けて分析を行い、それぞれの段階において対策を行うことが必要となる。
後編では、それぞれのフェーズに合わせた対応と、今後、災害に強いICTインフラを構築するためにはどのようにすればよいか、具体的に見ていく。
(後編に続く)