グリッド・モダナイゼーションの基本的な考え方
〔1〕グリッド・モダナイゼーション構想
それでは「グリッド・モダナイゼーション」とは一体何なのだろうか。米国のDOE(Department of Energy、エネルギー省)が公開している“Grid Modernization Multi-Year Program Plan”注6に載っているGrid Modernization Initiative(グリッド・モダナイゼーション構想)のビジョンには次のような内容が明記されている。
グリッド・モダナイゼーション構想のビジョン
「未来のグリッドでは、既存の電源と再生可能エネルギー源や蓄電池を統合し、集中型と分散型の両方のシステムを統合するという課題を解決するものである。この未来のグリッドは、グローバルに広がるクリーンエネルギー経済において、米国の繁栄につながり、競争力を高め、イノベーションを実現するものになる。未来のグリッドが実現することで、弾力性(Resilience)や信頼性(Reliable)、柔軟性(Flexible)が高く、安全(Secure)で、持続可能(Sustainable)で、かつ需要家にとって負担の少ない(Affordable)電力を届けることができるようになる。需要家はエネルギーを、使いたい場所で、使いたい時に、使いたいように使うことができるようになる」
Grid Modernization Initiativeとは、米国におけるグリッド・モダナイゼーションの取り組みを推進するためにDOEが開始した取り組みであるが、この定義は米国の個別の状況にとどまらず、グリッド・モダナイゼーションの取り組みを行うべき背景が明確に述べられている(もちろん、米国の繁栄のくだりの部分は別だが)。
〔2〕グリッド・モダナイゼーションの6つの要素
ビジョンの中で特に英語も併記した6つの要素は、グリッド・モダナイゼーションの結果、近代化されたグリッドの特徴として挙げられている(表1)。米国以外の他国におけるグリッド・モダナイゼーションに類する取り組みを見ていると、これらの点は共通していることがわかる。
表1 グリッド・モダナイゼーション(電力網の近代化)の6つの要素
出所 Grid Modernization MYPPなどをもとに著者作成
つまりグリッド・モダナイゼーションとは、私たちの生活がますます電気に依存していっているという大きな背景の中で、マイクログリッド、再エネなどの分散電源、蓄電池などこれまでにはないものがグリッドにつながってくるという時代の流れを踏まえ、そのような変化に対応できるようなグリッドに進化させていくというのが、グリッド・モダナイゼーションの基本的な考え方だと言える。