[特別レポート]

日米欧のグリッド・モダナイゼーション(電力網の近代化)への取り組み― 第1回 米国 ―

2016/12/13
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

米国におけるグリッド・モダナイゼーションの取り組み

 グリッド・モダナイゼーションの基本的な考え方の中で紹介したが、米国ではDOEが主導するGrid Modernization Initiative(グリッド・モダナイゼーション構想)という取り組みが進められている。

 この取り組みは、2014年11月17日に立ち上げが発表されたGrid Modernization Laboratory Consortium(グリッド近代化に関する研究所コンソーシアム、以下GMLCと表記)注7によって主導的に進められている。

 このGMLCは、DOE配下にある、

  • National Renewable Energy Laboratory(国立再生可能エネルギー研究所)
  • National Energy Technology Laboratory(国立エネルギー技術研究所)

などさまざまな研究所のほか、DOE内の組織として、

  1. Office of Science(SC、科学局)
  2. Office of Electricity Delivery & Energy Reliability(OE、配電・エネルギー信頼性局)
  3. Office of Energy Efficiency And Renewable Energy(EERE、エネルギー効率化・再生可能エネルギー局)
  4. Office of Fossil Energy(FE、化石エネルギー局)
  5. Office of Nuclear Energy(NE、原子力エネルギー局)
  6. Office of Energy Policy and Systems Analysis(EPSA、エネルギー政策・システム分析局)
  7. Advanced Research Projects Agency-Energy(ARPA-E、エネルギー高等研究計画局)

など、DOEのさまざまなステークホルダー(関係者)が携わっている。

 またDOEのほかにもDepartment of Defense(DOD、国防総省)やDepartment of Interior(DOI、内務省)やDepartment of Agriculture(DOA、農務省)、Department of Homeland Security(DOHS、国土安全保障省)、NIST(National Institute of Standards and Technology、米国標準技術局)など、DOE以外の省などもかかわっている。

 2016年1月14日には、DOEがこのGrid Modernization Initiativeに対して、2億2,000万ドルの投資を決定したことを発表している注8

Grid Modernization MYPP(グリッド近代化複数年プログラム計画)

 このGMLCが2015年11月に発表したのが、Grid Modernization MYPP(グリッド近代化複数年プログラム計画)という複数年プログラムである。この複数年プログラムは、さまざまなステークホルダーが今後2020年までにどのような分野でどのような取り組みをしていくのかを明らかにしたものである。分野を絞り込むにあたっては、

  1. 「技術(主にハードウェアの観点)」
  2. 「モデリングと分析(主にソフトウェアの視点)」
  3. 「制度とビジネス」

という大きく3つの観点から検討を行い、最終的には、図1と表2に示す6分野について取り組んでいくとしている。

図1 GMLCのメンバーとグリッド・モダナイゼーションで取り組む6分野

図1 GMLCのメンバーとグリッド・モダナイゼーションで取り組む6分野

GMLC:Grid Modernization Laboratory Consortium、グリッド近代化に関する研究所コンソーシアム
出所 https://nelha.hawaii.gov/wp-content/uploads/2016/09/16_09_12_PM_200_Bryan-Hannegan.pdf

表2 米国のGrid Modernization MYPPで取り組む6分野

表2 米国のGrid Modernization MYPPで取り組む6分野

出所 Grid Modernization MYPPなどをもとに著者作成

 また、これらの6分野の取り組みで得られたツールなどを実証するために、統合地域実証(Integrated Regional Demonstration)も行っていく計画もMYPPの中で明らかにしている。同計画では、10以上の地域でMYPPの3年目から4年目の時期(2018〜2019年頃)の実証開始を目指しているとしている。

 米国では、このGrid Modernization MYPPの取り組みを行うことで、2025年までに、次の3つの目標を達成することをゴールとして定めている。

  1. 停電による経済的損失を10パーセント削減
  2. 信頼性を維持しながら供給予備力注9を33パーセント削減
  3. 分散エネルギー源を統合するコストを50パーセント削減

▼ 注7
http://energy.gov/articles/launch-grid-modernization-laboratory-consortiumを参照。

▼ 注8
DOE Announces $220 Million in Grid Modernization Funding | Department of Energyを参照。

▼ 注9
電気の供給力は需要が予想以上に急増した場合を想定して余裕を持っておく必要がある。この余裕をもった供給力を「予備力」と言う。参照:東北電力でんき予報 | 東北電力

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