200万件を大幅に超えた電力会社の切り替え
一方、これらのガス小売全面自由化と並行して、電力のシステム改革も活発に進展している。電力広域的運営推進機関(OCCTO)が2016年12月7日に発表した、「スイッチング支援システムの利用状況について」注3によれば、電力自由化から8カ月経過した2016年11月30日時点で、電力会社の切り替えを行った世帯は234万4,600件(運用開始の2016年3月1日13時からの累計値)と200万件を大幅に超え、エリア別では東京電力の132万3,000件、関西電力47万6,100件と続いている。
今後、ガスの小売全面自由化が開始され、これらを束ねた総合エネルギーサービスなどが提供されるようになると、さらに切り替えが進むと期待されている。
VPPの実証事業:第1次の結果レポート
電力事業における再生可能エネルギー(以下、再エネ)の導入・拡大に向けて、経済産業省は、VPP(Virtual Power Plant、仮想発電所)構築の実証事業をスタートさせ(図1)、2016〜2020年度の5年間で、出力50MW以上のVPPの制御技術の確立を目指している。
図1 VPP(仮想発電所)のイメージ
出所 http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/energy_environment/energy_resource/pdf/001_03_00.pdf
すでに、2016年度では29.5億円の予算が組まれ、7個のVPP実証事業と19個のDR(デマンドレスポンス)実証事業がスタートしているが、2017年3月末には第1次(2016年度)の実証結果がまとまる予定となっている。
「ネガワット取引市場」の創設とスタート
2017年4月1日からは、再エネの導入やVPPなどによって「節電した電力量」(ネガワット)を売電できる「ネガワット取引市場」が創設され、スタートする。これに備えて、2016年1月に経済産業省がスタートさせたERAB注4検討会のネガワットWG(ワーキンググループ)において、「ネガワット取引に関するガイドライン」が改定注5された。このガイドラインの改定では、電力会社とネガワット事業者注6間の取引における基本的なルールを、ガイドラインに追加するなどの変更が行われた。
FITの見直し:改正FIT法を施行へ
太陽光発電や風力発電などの再エネの普及を目指して2012年7月1日からスタートした「再生可能エネルギーの固定価格買取制度」、いわゆるFIT(Feed-in Tariff)法は、その後の展開を踏まえ、2016年5月に「改正再生可能エネルギー特別措置法」(改正FIT法)が成立し、2017年4月1日から施行される。
この改正FIT法は、今後、「再エネの最大限の導入を目指しながら、国民の負担を軽減する」という両立を図り、最適なエネルギーミックスを実現していくために見直されたものである。
特に、太陽光パネル価格などの発電設備のコストが継続的に下落している中で、運転開始が遅れるものについては、調達価格の決定から運転開始までの期間が長くなるほど、調達価格設定の際に想定されていた発電設備のコストと実際にかかるコストの乖離が大きくなっていく。こうした実態を踏まえ、国民負担を抑制する観点から適正化を図るための制度設計と運用を行っていくことが必要となったのである注7。
▼ 注3
https://www.occto.or.jp/oshirase/hoka/161209_swsys_riyou.html
▼ 注4
ERAB:Energy Resource Aggregation Business、エネルギー資源集約ビジネス。需要家側にある分散したエネルギーリソース(太陽光発電、蓄電池、電気自動車、エネファーム、ネガワットなど)を、IoTを活用して集約(アグリゲーション)する新しいビジネス領域。
▼ 注5
「ネガワット取引に関するガイドライン」の改定、http://www.meti.go.jp/press/2016/09/20160901003/20160901003-1.pdf
▼ 注6
ネガワット事業者:多数の需要家による節電電力量を束ね、電力会社と取引を行う者。ネガワットアグリゲータとも呼ばれる。
▼ 注7
改定FIT法に関するよくある質問、http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/kaisei_faq.html