「非化石価値取引市場」で再エネを促進
〔1〕2030年に非化石電源を44%以上へ
政府が「非化石価値取引市場」を発足させる直接の目的は、2016年4月1日に改正となった「エネルギー供給事業者による非化石エネルギー源の利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律(エネルギー供給構造高度化法:改正法)」が、小売電気事業者に課している目標にある。
改正法では小売電気事業者に、調達する電力のうち「非化石電源」を2030年度までに44%以上とすることを課している。
しかし、自前で大規模水力発電所などの「非化石電源」をもたない小売電気事業者は、この目標を達成できない。そこで、非化石発電事業者から「非化石である」という事実を切り離して市場で売買できるようにするわけである。目標達成が難しい事業者は、市場で「非化石である」という事実を買い取れば、政府が課している目標を達成できる(図1)。
図1 非化石価値取引市場:非化石電源から「非化石である」という事実を切り離して、売買可能にする
出所 http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/shoene_shinene/shin_ene/pdf/017_03_01.pdf
〔2〕再エネの利用に積極的な欧米の企業
現状では、非化石価値取引市場は目標を達成できない小売電気事業者を救済する措置にとどまっている。しかし自然エネルギー財団は、制度を適切に設計すれば企業による再エネ活用を促進する役目を果たす、としている。
日本の企業に比べると、欧米の企業は再エネの利用に積極的である。例えば、再エネのみで事業を運営することを目指す世界的な企業連合「RE100」注3には約90社ほどが参加している。
例えばグーグル(Google)は、2017年には全世界の拠点で消費する電力を再エネで賄える見通しであることを発表している。同社が再エネ導入を進める理由として、2010年当時と比べると風力による電力の価格が60%、太陽光による電力の価格が80%下がっており、一部の地域では再エネによる電力が、どの電力よりも安くなっている事実を挙げている。
〔3〕なくなる燃料価格の変動による出費増
さらに、燃料を燃焼させて発電する電力の価格は、燃料の価格によって変動する点を指摘し、再エネを長期供給契約で購入することは、電力購入に必要な費用を長期的に予測可能なものとし、燃料価格の変動による出費増を避けられるというメリットを挙げている。
▼ 注3
RE100:Renewable Energy 100%、事業運営を100%再エネで調達することを目標に掲げる企業が加盟する国際環境NGOのThe Climate Groupが2014年に開始したイニシアチブ。加盟企業数は2017年1月31日時点で、世界全体で87社が加盟。食品大手スイスのネスレ、家具メーカースウェーデンのイケア、アパレルメーカーの米ナイキなども参加している。
https://sustainablejapan.jp/2017/02/01/re100/25334