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東電PG、「アグリゲーション事業」開始に向けて業務提携―2019年度の事業開始を目指す

2017/11/30
(木)
SmartGridニューズレター編集部

東京電力パワーグリッドは、「アグリゲーション事業」の開始を目指してグローバルエンジニアリングと業務提携契約を締結したと発表した。

東京電力パワーグリッド(東電PG)は2017年11月29日、「アグリゲーション事業」の開始を目指してグローバルエンジニアリング(福岡県福岡市)と業務提携契約を締結したと発表した。グローバルエンジニアリングはデマンドレスポンス事業の実績を持っており、電力広域的運営推進機関がネガワット事業者(需要抑制契約者:個々の住宅やビルなどの節電量を束ねる事業者)として、国内で唯一認定している企業だ。また東電PGと共に、経済産業省の補助事業である「バーチャルパワープラント構築事業」にも参加するなど、電力事業に関する先進的な取り組みに積極的に参加している。

アグリゲーション事業とは、経済産業省の「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会」などで実現に向けての課題などの議論が進んでいるもの。分散している小規模な発電設備や蓄電設備を束ねて1つの「プール」を作り、依頼に応じてプールから電力を供給したり、反対にプールへの充電を受け入れることで利益を上げる事業だ。ヨーロッパやアメリカなどの国ではすでに、アグリゲーション事業を手掛ける業者が現れており、サービスの提供も始まっている。例えば下図はドイツNext Kraftwerke社によるアグリゲーション事業の概要を示している。

図 ドイツNext Kraftwerke社によるアグリゲーション事業の概要。蓄電、発電設備を束ねたプール(左側)を利用して、アンシラリーサービス(電力系統安定化)に必要な電力を供給したり、電力卸市場の価格の推移を見て、高値の時にプール内から売電可能な電力を販売して利益を得る

図 ドイツNext Kraftwerke社によるアグリゲーション事業の概要。蓄電、発電設備を束ねたプールを利用して、アンシラリーサービス(電力系統安定化)に必要な電力を供給したり、電力卸市場の価格の推移を見て、高値の時にプール内から売電可能な電力を販売して利益を得る

出所 経済産業省 第1回「エネルギー・リソース・アグリゲーション・ビジネス検討会」配布資料

プールに参加する機器としては住宅にある太陽光発電システムや工場が保有する発電機などの発電設備と、住宅向け定置型蓄電池や電気自動車(EV)内蔵の蓄電池などの蓄電設備などが考えられる。東電PGとグローバルエンジニアリングは、2019年度内にアクリゲーション事業を開始することを目指している。今後はすでに設置済みで、すぐに利用できる機器を使うことを前提に、どのようなサービスを提供できるかといったことを検討する。

アグリゲーション事業者が構成するプールの想定顧客としては、小売電力事業者、送配電事業者、再生可能エネルギーを利用した発電所の運営者などが考えられる。

小売電気事業者は電力の需要と供給のバランスが崩れる(インバランス)恐れがあるときに、プールから電力を買い取って送電網に流す、あるいはプールに余剰電力を充電してもらうことで、インバランスを解消できる。送配電事業者は、送電周波数が乱れ始めたときに、プールから電力を購入して送電網に流すことで周波数を安定させることが可能だ。

再生可能エネルギー事業者は、発電しすぎて電力系統に流せない電力をプールに一時吸収してもらうことで、余剰電力が無駄ではなくなる。特に日本では東京電力グループ、中部電力、関西電力を除く大手電力事業者が再生可能エネルギーの受け入れ可能量を設定しており、すでに受け入れ可能量を超過している業者も多い。

このような場合、再生可能エネルギー事業者が太陽光や風力を利用した発電所を新規に系統に接続するには「無制限無保証」の出力制限に応じなければならない。出力制限を受けたら、その時間帯に発電した電力がすべて無駄になってしまう。そこで、プールに一時的に充電して後に売電すれば、発電した電力が無駄になることを防げる。

また、アグリゲーション事業者はプールを構成する機器を制御して、蓄電池に充電してある電力や、余計に発電している自家発電設備からの電力などを束ねて、電力卸売市場で売電することで利益を得られる。利益は、プール内の蓄電池や自家発電設備などの所有者に分配する。蓄電、発電設備の所有者はフル活用できていない自家設備をプールに参加させることで、機器を十分に活用でき、利益も得られる。

さらに、プール参加者はアグリゲーション事業者からのデマンドレスポンス要求に応じて節電することでも利益を得られる。アグリゲーション事業者が各参加者の節電量(ネガワット)を電力事業者に販売し、利益を参加者に配分する。ほかにも、企業や商店などがプール内の蓄電池や発電設備を利用することで、電力消費量がピークに達する時間帯に電力会社から受電する電力量を削減し(ピークカット)、契約電力の上昇を防ぐという使い方も想定できる。

東電PGとグローバルエンジニアリングは、2019年度内の事業開始を目指してさまざまな事項について検討するが、事業開始当初から上記のすべてのサービスを提供できるわけではない。例えば、送配電事業者に向けて周波数を安定させるための電力供給などは、極めて短い時間でサービス要求に応えなければならないが、現状、日本各地にある設備を考えると、このサービスに対応できる体制が整っているとは言えないという。

まずは2社で検討を重ね、事業開始時には可能な範囲でサービスを提供する。そのときに提供できないサービスについては、事業開始後も検討を続け、技術開発の状況や対応機器の普及状況などを見極めて、状況が整ったところで、順次サービス提供を開始する予定だとしている。


■リンク
東京電力パワーグリッド
グローバルエンジニアリング

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