公開された9つの仕様書で構成された初版リリース「V-2014-08」
前述したように、M2Mサービスレイヤ(M2Mプラットフォーム)の標準化を目指す組織として、2012年7月に発足したoneM2Mでは、複数のM2Mアプリケーションにまたがる共通のユースケースとアーキテクチャに基づく第一歩として、「M2Mサービスレイヤ」の仕様書の作成を目指して検討が進められ、これまで、表2の3つのステージに分けて策定されてきた。
表2 oneM2M技術仕様の標準化のステージと策定内容
〔出所 「M2M標準化最新動向―oneM2M技術仕様(初版)の全貌―」講演資料を元に編集部作成〕
これらのほか、セキュリティTSやデバイス管理TSなどをまとめて2014年8月に、9つの仕様書をもつ初版リリース「V-2014-08」版が公開されたのである(表3)。
今回公開された初版リリースでは、「V-2014-08パッケージ」として9件のドキュメントが公開された。今後、2014年11月1日までV-2014-08のパブリックコメント(外部からの意見収集)が行われ、その意見を反映したバージョンを2015年1月に「V-2015-01パッケージ」として改訂して承認し、発行するスケジュールとなっている。
表3 oneM2Mの初版リリース「V-2014-08」版の9つの仕様書
〔出所 「M2M標準化最新動向―oneM2M技術仕様(初版)の全貌―」講演資料、oneM2Mサイト(http://www.onem2m.org/candidate_release/)より〕
〔1〕oneM2Mのアーキテクチャの構成
次に、oneM2Mの機能アーキテクチャ(機能面を重視して見たアーキテクチャ。実装とは異なる)を図2に示す。機能アーキテクチャは、図2の左側がデバイス(端末)側で右側がサーバ側となっており、それぞれAE(アプリケーション機能)、CSE(Common Service Entity、共通プラットフォーム)、NSE(ネットワークサービス機能)の3層機能を備えて通信が行われる。少々複雑となるが、図3がoneM2Mアーキテクチャの実装イメージである。
図2 oneM2M機能アーキテクチャの構成(機能面からの構成)
〔出所 「M2M標準化最新動向―oneM2M技術仕様(初版)の全貌―」講演資料より〕
図3 oneM2Mアーキテクチャの実装イメージ
〔出所 「M2M標準化最新動向―oneM2M技術仕様(初版)の全貌―」講演資料より〕<
図3の最上部にサーバ(IN:Infrastruc-ture Node)が配置され、最下部にM2Mデバイスが配置される。サーバとM2Mデバイス間にはM2Mゲートウェイ(MN:Middle Node)が設置され、ここで相互接続ができるようにプロトコル変換などが行われるため、多様なデバイスが接続可能となる(非oneM2Mデバイスも接続可となっている)。
〔2〕共通プラットフォームの各種機能モジュール(CSF)
図4に、oneM2Mで、標準化が進められている共通プラットフォーム(CSE)を実現するための12個の各種機能モジュール(CSF)を示す。12個のCSFをもつCSEの下位には、ネットワークサービス機能(NSE通信機能)が位置づけられ、M2Mデバイスなどの通信が行われる。
図4 共通プラットフォーム(CSE)の各種機能(CSF)
〔出所 「M2M標準化最新動向―oneM2M技術仕様(初版)の全貌―」講演資料より〕
今回のセミナーでは、このなかから、図4のオレンジ色で示す①登録CSF、②通信管理/配布機能(CMDH)CSF、③ネットワークサービス連携CSF、④サブスクリプション・通知CSF、⑤デバイス管理CSF、⑥セキュリティCSFの仕様について解説が行われた。
サービスレイヤプロトコル(M2Mプラットフォーム)
最後の講演となった(株)富士通研究所の藤本真吾氏からは、サービスレイヤプロトコルの説明が行われた。
oneM2Mの技術アーキテクチャは、RESTful注3構造を採用しているため、データの記述方式に関しては、標準的なデータフォーマットであるXMLを使用する。初版リリースではXMLデータ型のみを規定しているが、今後は、可能であればJSON注4データ型など、他の形式も定義していく。
M2M/IoT/IoEの時代に向けたoneM2Mの今後の展望
藤本氏は、oneM2M技術仕様の次期のリリース(通称:lime)で想定される内容として、①SCA(Service Com-ponent Architecture、サービスコンポーネントアーキテクチャ)、②セマンティックス仕様書の作成、③デバイス関連の標準化(M2Mデバイス/ゲートウェイの分類、モジュール)、④新たなユースケースの収集、⑤コンフォーマンステスト(適合性試験)仕様、⑥Home Domain Enablement(家庭領域の技術)などが期待されていると語った。
さらに、oneM2M技術仕様に基づいた製品の開発について、M2Mの技術の標準化はこれからも進んでいくため、デバイス管理などの機能において、ファームウェア注5をアップデートできる仕組みを強化していくことが、デバイスの開発促進につながるのではないかと述べた。
また、KDDI(株)の山崎徳和氏は、「V-2014-08」リリース後、外部のM2M関連の団体からも、oneM2Mの仕様が大きな注目を集めていると述べ、oneM2Mだけではなく、周りの関係ある組織や業界が注目して、まずは技術仕様を使ってみてもらうことが、業界の発展につながると締めくくった。
今後、あらゆるモノがつながるM2M/IoT/IoEの時代を迎え、oneM2Mの標準技術が、より効率的で革新的な、新しいサービスの創造を後押しすることを期待したい。
▼ 注3
RESTful:「REST」とは、「RE-
presentational State Transfer」のことで、URI(Uniform Resource Identifier、リソースの場所を示す識別子)を指定することによって、リソースを容易に参照できる構造である。具体的には、RESTの概念は広く使われているHTTP に採用されている。〔HTTP:Hypertext Transfer Pro-tocol、インターネット上でWeb ブラウザ(クライアント)とWeb サーバ間でデータを送受信するために使われる通信プロトコル〕。REST アーキテクチャを踏襲しているシステムは、RESTfulシステムと呼ばれる。
▼ 注4
JSON:JavaScript Object Notation、データ交換フォーマットの一種。
▼ 注5
ファームウェア:ハードウェアの制御を行うために機器に組み込まれたソフトウェアのこと。