SnapgragonのIoT市場への展開
さらに、サンダーソフトとサンダーコムのIoT市場への取り組みを見ていこう。
〔1〕必須となるエッジ・コンピューティング
表3に、コンピューティングの歴史的な流れを示すが、コンピューティングのトレンドは、現在、クラウドに集められたビッグデータに対して処理を行う集中処理型のクラウド-モバイル型が中心となっている。しかし、今後、2020年頃にはIoTデバイスが500億個も接続されるIoT時代を迎えるため、現場で発生する大量なセンサーデータなどをリアルタイム処理するには、集中型のクラウドでは困難となる。このため、現場(ローカル)で分散的に処理することが求められている。
表3 コンピューティングのトレンド
※構造化データ:データベース(RDB)のテーブル(表)に合うように整えられたデータ(規則性のあるデータ)。データ分析の場合は、構造化データが適している。これに対して、ワード文章やメール文などは、規則性がないため「非構造化データ」といわれ、データの分析が難しいといわれてきた。しかし、最近、言語解析などが進み「規則性がなかったデータ」から規則性を見つけることで、データ分析が可能になってきている。
出所 サンダーソフトジャパン「Qualcomm SnapdragonのIoT市場への展開」、2017年8月24日
これを解決するため、サンダーソフトは、図3に示すように、クラウドと連携しながらも現場に近い「エッジ」で発生するデータを処理する、エッジ・コンピューティングを実現する仕組みを提供している。
図3 重要となるエッジ・コンピューティング(エッジデバイス処理)の例
出所 サンダーソフトジャパン「Qualcomm SnapdragonのIoT市場への展開」(2017年8月24日)をもとに編集部で作成
エッジとは、現場のIoTデバイスにより近い場所、つまりネットワークの端を意味し、このエッジ部分では、例えば、飛行機に搭載されている各デバイスからは、5GB/秒程度のデータがリアルタイムに発生しているといわれている。
前述したように、図3は、これを処理する仕組みとして、Snapdragonを核にしたエッジ・コンピューティング(エッジデバイス処理)のイメージ例である。
〔2〕AWSクラウドにおけるエッジ・コンピューティング
また、クアルコムとサンダーソフトは、図4に示すように、アマゾンのAWSクラウド(AWS Greengrass注10)の機能の一部をエッジデバイスにもたせて連携させながら、IoTアプリケーションをシームレスに実行するIoTソリューションを開発した。これによって、AWSクラウドの機能とエッジデバイスを連携させてエッジ・コンピューティングを実現している。
図4 AWSクラウド(AWS Greengrass)におけるエッジ・コンピューティングの仕組み
出所 サンダーソフトジャパン「Qualcomm SnapdragonのIoT市場への展開」(2017年8月24日)をもとに編集部で作成、
https://aws.amazon.com/jp/greengrass/
https://www.qualcomm.com/news/releases/2017/06/07/qualcomm-brings-power-amazon-web-services-edge-facilitating-development-iot
図4に示すように、アマゾンが提供するAWS Greengrassは、AWSクラウド(Amazon Web Service)を現場のIoTデバイスにシームレスに拡張する機能を備えている。そのため、インターネットに接続された現場(ローカル)のIoTデバイスは、Greengrassコアと連携してGreengrassグループを形成し、自分で生成したデータの管理や分析、および耐久性のあるストレージ(データの蓄積)をローカルに実施(エッジ・コンピューティング)することができるようになる。つまり、Greengrassコアを実装したデバイス(SnapdragonチップセットにGreengrassソフトを実装)とAWSクラウドは直接通信し、必要に応じてAWSクラウドに、ローカルでの処理結果を送って蓄積する。
このようなAWSクラウドの機能の一部をエッジ・コンピューティング側でも実現できる仕組みによって、AWS クラウドとローカルのIoTデバイス全体で IoT アプリケーションをシームレスに実行できるようになる。
具体的には、SnapdragonチップセットにGreengrassソフトを実装して、実現している。
これによって、例えばオフィスに1台エッジサーバ(Greengrassコアのサーバ)を置いて、Greengrassコア(エッジ)とAWSクラウドとの接続が途切れた場合でも、Greengrassグループ内のIoTデバイス群は、ローカルネットワーク上で互いに通信を続けることができる。