バッテリーの性能を評価・保証し保険商品を設計
損害保険ジャパン株式会社(以下、損保ジャパン)、国立研究開発法人産業技術総合研究所(以下、産総研)、産総研グループの株式会社AIST Solutions(以下、AISol)の3者は、電気自動車(EV)バッテリーと二次利用向けバッテリーの性能を評価・保証し、それをもとに保険商品を設計する技術を共同開発した。バッテリー性能を保証する保険商品の提供により、中古EV市場の活性化やEVバッテリー二次利用市場の形成につながるとする。損害保険ジャパンが、2025年10月8日に発表した。
図1 損保ジャパンと産総研が共同開発した保険設計技術の概要
出所 損害保険ジャパン株式会社 プレスリリース 2025年10月8日、「EVバッテリーの保険設計技術を共同開発」
劣化予測モデルと保険数理でバッテリー状態に応じた保険商品を設計
EVは、車両価値を左右するバッテリーの残存性能や寿命の不確実性が、中古車市場における取引の障壁となっていた。その結果、リセールバリューがガソリン車に比べ低くなる傾向があり、EV普及を阻む一因とされてきた。また、使用済みバッテリーを定置型蓄電池注1などに転用する二次利用市場においても、残存価値の適正な評価が課題となっていた。
今回、損保ジャパンと産総研グループが共同開発したのは、EVのバッテリーの残存性能に対する保証リスクを算定するためのモデル。
最新のEVバッテリーの耐久試験や解体分析を通じて、内部で起こる複雑な劣化プロセスを科学的に数式化した。この数式により、バッテリーの種類やEVの利用方法、環境条件を考慮し、バッテリーの劣化を予測する。
さらに、走行距離やスキャナツールで取得可能なバッテリーのデータを組み合わせることで、個別に劣化予測モデルを調整し、予測の精度を高めるという。
この劣化予測モデルと保険数理を組み合わせた独自のアルゴリズムにより、バッテリーの状態や使用状況に応じた保険の価格や補償内容を設定する。
バッテリー性能の不確実性というリスクを保険でカバーできるようにし、中古EVの適正な価格形成につなげるとする。また、バッテリーの残存価値を適正に評価することで、EVの残価設定の精度が向上し、結果としてリース料や維持費の低減につながるのに加え、EVバッテリー二次利用市場の形成を促すと見込む。
今後、損保ジャパンと産総研は、連携して評価技術の精度向上や、将来の技術進化に対応したモデルを開発する。また、損保ジャパンは、同技術を活用し、EVやバッテリーの製造・販売・利用に関わる企業との協業を進める。
注1:定置型蓄電池:工場や家庭などに設置され、電力系統に接続して電気を貯蔵・供給するバッテリーシステム。再生可能エネルギーの出力安定化や電力のピークシフトなどに利用される。