フォグコンピューティングの適用領域
〔1〕スマートシティへの適用
次に、フォグコンピューティングの適用領域やユースケースを見てみよう。
図7は、クラウドとフォグコンピューティングを適用したスマートシティのイメージである。図7の左には設置されるフォグノード場所の例が示されている。また、図中には最適化された病院や最適化された通信網などがあるが、これらはフォグノードに求められるコンピューティング能力やストレージ能力が最適化されて設置されることをイメージしている。
図7 拡大するフォグコンピューティングの適用領域
出所 今井 俊宏、「フォグコンピューティング」、2017年12月19日
〔2〕4つのユースケースの例
さらに、OpenFogコンソーシアムでは、フォグコンピューティンの普及促進のため、①自動運転車、②油田やガス採掘、③スマートビルディング、④患者のモニタリング(スマートヘルスケア)などのユースケースにも取り組んでいる。
また、日本地区委員会注8も、①製造業へのフォグの適用(リーダーは東芝)、②カーシェアリングへのフォグの適用(リーダーは富士通)という2つのユースケースに取り組んでおり、これらによって、フォグコンピューティングの普及が加速されると見られている。
フォグコンピューティング応用事例
次に、フォグコンピューティングの応用事例を見てみよう。
〔1〕マンホールモニタリングの例
図8は、日立システムズが、官公庁や自治体などが設置したマンホールに、フォグコンピューティングを適用した、マンホールモニタリング(監視・保守)の例である。
図8 日立システムズのマンホールの防犯・安全対策ソリューション
センサー内蔵のマンホールからの、開閉状態、有毒ガスの発生の有無、水質・水量などのデータを、シスコシステムズの屋外型フォグノード「CGR1240」で収集し、日立システムズのクラウド型遠隔統合監視プラットフォームと連携させたものである。
これによって、マンホールの窃盗・破損などの早期発見、老朽化・自然災害によるマンホールの状態異常の監視などを行うことができる。
〔2〕スペインのバルセロナシティの例
観光都市スペイン・バルセロナシティは、WMC(World Mobile Congress、世界最大のモバイルに関する国際展示会)をはじめ多くの国際イベントが開催され、多くの観光客が訪問している。同市は、世界に先駆けてWi-Fiネットワークのアクセスポイントも多数設置され、充実した通信インフラが整備されたスマートシティとして注目されている。
バルセロナシティでは、図9に示すように、市内の500カ所に設置されたWi-Fiのアクセスポイントを活用すると同時に、3,000カ所を超えるフォグノードを設置し、スマートライティング、スマートパーキング、インテリジェントバス停、スマートゴミ収集管理を整備している。またそのための位置情報分析・環境センサーのなども設置し、スマートシティを実現している。
図9 スペインのバルセロナシティのスマートサービスの例
出所 今井 俊宏、「フォグコンピューティング」、2017年12月19日
同市は、世界でも先進的なスマートシティとして、なお発展・進化を続けている。
* * *
以上、2020年に500億個ものIoTデバイスがネットワーク化されるIoT時代の到来に向けて、「クラウド」「エッジ」「フォグ」の関係を整理しながら、フォグコンピューティングに焦点を当てて解説してきた。
IoT時代に誕生した「フォグコンピューティング」という新しく柔軟な分散処理技術は、ビッグデータ、AIやブロックチェーンともマッチした新しい市場を開拓し始めている。エッジコンピューティング、フォグコンピューティングが、新市場を切り拓いていくことに期待したい。
▼ 注8
OpenFogコンソーシアムでは、地域ごとにRegional Committeeを設けている。日本にはJapan Regional Committee(日本地区委員会)があり、活動をしている。