コンソーシアムを結成し推進
同実証事業は、図1に示すように、今回は3回目となる平成30年度から3カ年計画の実証事業となっている。すでに研究技術開発や標準化・事業化を推進する多彩な企業や団体で構成される「データセンタオープンイノベーションコンソーシアム」(実証事業の協力組織)が2013年7月に設立され、実証事業が推進されている。
図1 環境省の3回のCO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業のプロフィール
出所 環境省平成30年度CO2排出削減対策強化誘導型技術開発・実証事業:【5G基地局を構成要素とする広域分散エッジシステムの抜本的省エネに関する技術開発】
実証事業が開発するシステムイメージは、5G基地局内あるいはその近くに設置されるエッジコンピューティングシステム(MEC)注2と、エッジ・フォグ、コアネットワークを使用して、クラウド(センタークラウド)と連携させて省エネを実現する。すなわち、地域分散のMECによって、トータルなデータセンターの消費電力を大幅に削減することを目標としている。
クラウドの歴史的な技術潮流:第3の波のIoT/5G
あらゆる産業を支えるクラウドの歴史的な経緯と技術潮流を見ると、第1の波としてWeb、第2の波として「ソーシャルサービス」(SNS)、第3の波としてIoTが挙げられる。
第1の波であるWebには、ブラウザ(IE:Internet Exploreなど)や検索エンジン(Yahoo!、Googleなど)があり、第2の波には、LINEやFacebookなどのSNSが、第3の波には、現在、直面しているIoTがある。IoTは、国際的には商用サービスも始まっている5G(第5世代モバイル)と密接に関連しているため注目されている。
これら3つの波の進展とクラウド(サーバ群で構成されたデータセンター)はあらゆる産業シーンを支えてきており、今後も支え続けるものとされている。今回の実証事業は、特に最近、IoTと5Gというキーワードに関心が高まってきていることから、この2つを対象とした省エネ施策を中心に実証事業が行われている。
▼ 注1
エッジコンピューティングシステムの広域連携システム:次世代型コンピューティングシステム(例:エッジコンピューティングシステム)によるデータセンターや固定/携帯基地局の全体ネットワークの最適化に向けた開発・実証。具体的には【5G基地局を構成要素とする広域分散エッジシステムの抜本的省エネに関する技術開発】として採択され、「データセンタオープンイノベーションコンソーシアム」の協力を得て推進されている。http://www.env.go.jp/earth/ondanka/biz_local/30_a33/H30_a33_zyuten.pdf
▼ 注2
MEC:ETSI ISG MEC〔ETSI Industry Specification Group for Multi-access Edge Computing。ETSI(欧州電気通信標準化機構)のMEC仕様作成グループ〕が策定しているエッジの仕様。ETSI ISG MECは、2014年12月からモバイル端末に近い場所で、処理の遅延に厳しいアプリケーションにも対応できるように、当初「MEC:Mobile Edge Computing」という名称で標準化を目指していた。その後、固定網(FWA:Fixed Wireless Access)やWi-Fiなど複数のアクセス(マルチアクセス)からも可能なように仕様を拡張するため、2017年9月に「MEC(Multi-access Edge Computing)」へと名称を変更した。3GPPは、ETSI ISG MECと連携してMECの仕様を策定している。
https://portal.etsi.org/portals/0/tbpages/mec/docs/mec%20executive%20brief%20v1%2028-09-14.pdf
https://www.etsi.org/technologies/multi-access-edge-computing