[クローズアップ]

日本と中国が次世代EV急速充電の統一規格を共同開発へ

— チャデモ協議会と中国電力企業連合会が2020年をめざし調印 —
2018/09/01
(土)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

CHAdeMO充電器の特徴とプロトコル

 次に、CHAdeMO充電器の特徴を、図2を見ながら解説しよう。

図2 電気自動車(EV)の充電方式(日本のCHAdeMO)の場合

図2 電気自動車(EV)の充電方式(日本のCHAdeMO)の場合

※1 CHAdeMO方式は、IEC、JIS、EN(欧州規格),IEEEで標準規格となっている。
※2 CHAdeMO方式が普通充電と急速充電の充電口を2つ(別々のコネクタ)に分けているが、欧米のコンボ方式の充電口は1つ(普通充電と急速充電を1つのコネクタ)、中国のGB/T方式も(CHAdeMO方式に似ているが)充電口は1つである。
出所 各種資料より編集部で作成

〔1〕2つの充電方式と急速充電への期待

 図2からわかるようにCHAdeMO方式には、次の2つの方式がある。

  1. 普通充電方式(基礎充電):充電完了時間は8時間程度。家庭や職場の通常のコンセントで日常のEV充電を行う。
  2. 急速充電方式(補充充電):充電完了時間(80%完了)は30分程度。普通充電の補完的な役割である。

 すなわち、急速充電方式は、スーパーや旅行などの出先で、従来のガソリン車がガソリンスタンドで給油するのと同じように、充電スタンドで電気を充電する場合の方式である。充電するために8時間もかかっていては、EVは普及しないので、できるだけ時間を短縮して充電できるように「急速充電方式」が開発された。ガソリンの給油と同じように数分で満充電できれば、EVの利用しやすさは格段に上がると期待されている。

〔2〕CHAdeMOプロトコル

 CHAdeMO方式では、どのような手順で充電されるのだろうか。そのプロトコルについて、簡単に紹介する。

 CHAdeMOプロトコル注1とは、EVと充電スタンドの間でやり取りされる充電など電力需給に関する通信規格のことである。このプロトコルは、EV蓄電池の保護や運転者の感電保護、充電制御の安全装置、コネクタのインターロック(事故防止の仕組み)を重視したプロトコルとなっている。

 図3は、急速充電器とEVに搭載されているECU(Electronic Control Unit、電子制御ユニット)を、CAN通信によって制御するプロトコルの仕組みである。

図3 CHAdeMOプロトコルによる急速充電器とEV間のCAN通信の仕組み

図3 CHAdeMOプロトコルによる急速充電器とEV間のCAN通信の仕組み

出所 「一般社団法人 チャデモ協議会 会則」(2016年6日2日改定)

  1. 急速充電器のコネクタをEVへ挿入し接続すると、①急速充電器からEVに対して動作ステータス(車載電池の状態)を問い合わせる。
  2. EV内のECUは蓄電池の状態を確認し、②充電許可信号や③電流指令値(最適な受電電流値)などの情報を、時々刻々急速充電器に送信する。
  3. その信号や指令値を受け取った急速充電器は、ECUからの指令値に基づいた④直流電流を出力して(供給して)、EVの車載電池を充電する。
  4. このとき使用されるネットワークが、業界で標準的に使用されているCAN(Controller Area Network、EVの電子回路や制御装置を接続するためのネットワーク)である。

 このようなプロトコル構成によって、どのようなEVにも急速充電器が適用できるよう、汎用性が確保されている。


▼ 注1
http://www.chademo.com/ja/technology/technology-overview/

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