[クローズアップ]

日本と中国が次世代EV急速充電の統一規格を共同開発へ

— チャデモ協議会と中国電力企業連合会が2020年をめざし調印 —
2018/09/01
(土)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

中国における自動車市場とEV市場

〔1〕中国:世界最大の自動車市場

 ではなぜ、今、中国が日本とEV用急速充電の統一規格を策定するに至ったのだろうか。その背景を見てみよう。

 図5は、英国の調査会社HIS Markitが発表した、世界の自動車販売台数の推移と2017年の販売実績である。2017年の全世界の自動車販売台数の実績は9,350万台と発表されたが、図5を見ると、世界市場は引き続き右肩上がりであり、第1位が中国で30%、第2位が米国の22%、第3位が欧州の22%である。中国と米国が2大市場(世界の5割)となっており、今後、インドなどの新興国についても重要なマーケットと見られている。

 また、EVについては、2016年のEV世界市場は、まだ市場規模は小さいものの前年比38.2%増の47万台となった注2。このうち、中国のEV市場は、前年比60.0%増の24万台と世界最大のEV国となり、50%以上のシェアとなっている。

〔2〕EVシフトの波に乗る中国政府の自動車政策

 中国は、現在、国際的な自動車産業におけるEVシフトの波に乗って自動車強国をめざして、さまざまな政策を次々に打ち出している。

 具体的には、中国の都市部おける深刻な大気汚染問題を解決することや、パリ協定の実現に向けて、地球温暖化ガスの排出抑制を強化することを基本政策としている。この政策の一環として、中国政府は2017年9月に「NEV規制」を2019年1月から導入すると発表した(図6)。

図6 中国におけるNEV(新エネルギー車)

図6 中国におけるNEV(新エネルギー車)

出所 http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/jidousha_shinjidai/pdf/001_01_00.pdf

 この方針の下に、中国政府は、EV、プラグインハイブリッド車(PHV)、燃料電池自動車(FCV)などのエコカーをNEV(New Energy Vehicle、新エネルギー車)と位置付け、NEVの普及促進を強化している。例えば、NEV車両購入税の免税や、自動車メーカーへの補助金支給などの優遇政策ほか、ガソリン車メーカーの新規設立禁止などの方針が出された。

 さらに「NEV規制」のもとに、中国と取引する自動車メーカーは、中国での生産・輸入量に応じて、一定比率のNEVを製造販売しなければならなくなった。

 今回の日中共同の急速充電統一規格策定への調印と同期するかのように、日産自動車は中国における合弁会社、東風汽車有限公司(DFL)の乗用車部門である東風日産乗用車公司(東風日産)は、8月27日、ニッサンブランドとして初めて中国市場に投入するEV「シルフィ ゼロ・エミッション」(日産リーフの技術を織り込み開発された電気自動車)の生産を開始したことを発表した。

 さらに、各国のトラックメーカーも、2020年の量産に向けたEVトラックの開発を次々に発表している。今後、中国の「NEV規制」に対応する自動車メーカーが相次いて登場すると見られている。

今後の展開:世界の「統一国際標準規格」へ

 ここまで、日本と中国の急速充電の統一規格の合意を背景に、日本のCHAdeMOについての展開とともに中国政府の自動車戦略の一端も見てきた。

 EVについては、これまで英国やフランス、米国のカリフォルニア州で、EVシフトへの動きが活発化していたが、日中共同の統一規格を契機に、3方式の急速充電規格が1つの方式に統一される気運が盛り上がり、EVシフトはますます加速していくと考えられる。

 また、この新しい統一規格を、欧米や、今後EV市場に参入してくるインドなどの巨大市場に働きかければ、日中の統一規格が世界の「統一国際標準規格」になる可能性もある。さらに、今回の大容量の統一急速充電規格が策定されれば、EVの充電時間がガソリンスタンドでの給油並みに短縮できるほか、導入コストも低減でき、1台の急速充電器で何台もの自家用車が充電可能となる。加えて、大容量のバッテリーを搭載するEVバスやEVトラック、産業用機器などの充電も容易に対応できるようになろう(図7参照)。

 これらを実現するためには、EVに搭載する蓄電池の容量を大きく、かつ安価にする必要がある。まさに、自動車産業におけるオープンイノベーションが求められる時代を迎えた。


▼ 注2
http://www.group.fuji-keizai.co.jp/press/pdf/170622_17059.pdf

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