VPP構築実証事業の具体的な目標
現在、日本全体で展開されているVPP構築実証事業は、IoT技術などを駆使して、2016年度から2020年度までの5年間に、以下を実現することを目標に推進されている(具体的な構築実証事業の状況は次号の後編で関西VPPプロジェクトの例を挙げて説明する)。
- 50MW以上の調整力をもつVPPの遠隔制御技術を確立する。
- エネルギーリソースの制御時間の短縮化(DR時間の短縮化)を確立する。
- 電気自動車(EV)などの車載用蓄電池を新たなエネルギーリソースとして実用化する。
- 太陽光・風力などの再エネの導入を拡大する(コネクト&マネージの確立も含めて)。
- 省エネルギー・電力負荷の平準化の促進やDRなどの取り組みを強化する。
このVPP構築実証実験では、これまで、
- 2016年度には、エネルギーリソースの単体制御や基盤システムの構築
- 2017年度には、エネルギーリソースの制御時間を数分間以内とし、複数のリソースをリレー(中継)することや、送配電事業者とオンラインシステムの構築
- 2018年度には、リソースの制御時間を数秒間以内に短縮し、複数リソースをリレーすることや、秒単位のリソースの制御とセキュリティを両立させるなど通信手段の確立
などが、重点的に実施されている。
VPP構築実証事業補助金と実証事業の見直し
表1 需要家側エネルギーリソースを活用したVPP構築実証事業補助金
出所 資源エネルギー庁「2019年度VPP構築実証事業概算要求に関する資料」2018年9月28日、などを参考に編集部で作成
http://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/energy_resource/pdf/008_08_02.pdf
http://www.meti.go.jp/main/yosangaisan/fy2019/pr/en/shoshin_taka_04.pdf
http://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/energy_resource/pdf/008_08_01.pdf
〔1〕2019年度は予算55億円と大幅に増額
これらを推進するため、政府から予算として提供されるVPP構築実証事業補助金を、表1に示す。VPPへの期待値が高いこともあって、今年度(2018年度)の予算が41億円であったのに対し、2019年度は55億円と大幅に増額されている。
〔2〕VPP構築実証事業で導入予定のリソースと調整力の分類
また、過去のVPP構築実証事業において導入済みの既存のエネルギーリソースと、2018年度で導入予定のリソースの合計〔制御可能な量(kW)ベース〕を表2に示す。各リソース(家庭用蓄電池からエネファーム、V2H関連まで)の調整力については、一般送配電事業者からの指令(DR指令)に対して、「即時に対応できる調整力」、あるいは「比較的応答に時間がかかる調整力」によって、次のように分類され実証されている注2。
- 一次調整力:一般送配電事業者からのDR指令に対して、実際に発動するまでの応動時間(調整力として動作するまでにかかるリソースの時間)が10秒以内と速く、調整力としての継続時間が数分以上稼働するリソースであり、発電機や蓄電池などがある。
- 二次調整力:同じく発動までの応動時間が数分以内のリソースで、調整力としての継続時間が15分以上のリソースであり、発電機、DR、蓄電池などがある。
- 三次調整力:発動までの応動時間が15〜30分以内と遅いリソースであるが、継続時間が数時間以上と長いリソースであり、発電機、DR、自家発余剰などがある。
いずれも高速化をめざして、実証が行われている。
表2から、VPPリソースの調整力としては、産業用蓄電池が最もポテンシャルが高いことがわかる。
表2 過去と今年度(2018年度)導入予定のVPPリソースの合計
※ 現時点では、後述する上げDRと下げDRの個別集計はできないため、今後集計を実施予定。
出所 一般社団法人環境共創イニシアチブ「2018年度需要家側エネルギーリソースを活用したバーチャルパワープラント構築実証事業費補助金 実施状況報告」、2018年9月28日
http://www.meti.go.jp/shingikai/energy_environment/energy_resource/pdf/008_08_01.pdf
https://www.occto.or.jp/iinkai/chouseiryoku/sagyoukai/2017/files/chousei_sagyokai_04_03.pdf
▼ 注2
https://www.occto.or.jp/iinkai/chouseiryoku/jukyuchousei/2018/files/jukyu_shijyo_05_03.pdf