[【創刊6周年記念】 発送電分離直前! 次世代の電力システムはどうあるべきか]

ビジネスフェーズに突入した日本のVPP(前編)

― 低炭素社会へ向けてV2Gアグリゲーター事業を新設 ―
2018/12/01
(土)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

VPP構築実証事業のビジネス化に向けた取り組み

〔1〕調整力電源の分類と高速化

 また、VPP構築実証事業のビジネス化に向けた取組みの一環として、2018年度では、調整力を分単位で応動させ、継続時間内に出力を変化させる制御技術の確立をめざしている(図3)。さらに、2019年度以降では、円滑に実ビジネスに移行させるため、これまでの制御技術をさらに進展させるとともに、市場規模がより大きい速度の速い制御技術の確立をめざしている。

図3 VPP実証事業の事業化に向けた取り組み(案)

図3 VPP実証事業の事業化に向けた取り組み(案)

出所 資源エネルギー庁「2019年度VPP構築実証事業概算要求に関する資料」、2018年9月28日

 なお、図3に示す調整力電源の分類について、一般送配電事業者があらかじめ確保する調整力である電源I(でんげんイチ)をはじめ、電源I-a、電源I-b、電源I'(でんげんイチダッシュ)などの内容を表3に示す。

表3 調整力電源の分類:電源Ⅰ、電源Ⅰ-a、電源Ⅰ-b、電源Ⅰ'など(公募される)

表3 調整力電源の分類:電源Ⅰ、電源Ⅰ-a、電源Ⅰ-b、電源Ⅰ'など(公募される)

※2017年4月に、「DR取引市場」創設によって、DRは、日本卸電力取引所(JEPX)での取引が可能となった。また、一般送配電事業者が公募によって行う調整力(上表参照)の調達にも、2017年度分(電源Ⅰ’厳気象対応調整力)から、DRを活用した応札が行われている。
出所 http://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/negawatt.html

〔2〕調整力と「上げDR」と「下げDR」

 ここで、表2に示す「上げDR」と「下げDR」を簡単に説明しておこう。

 電気は「貯蔵できない」(電力貯蔵用の大規模蓄電池が高価でまだ実用化されていない)という性質をもつため、常に電力の需要(消費)と供給(発電)をバランスさせなければならない。このバランスが崩れると、電気の品質の1つである周波数(東日本は50Hz、西日本は60Hz)が変動してしまい、停電などの事故につながる原因ともなる。2018年9月6日未明に発生した「平成30年北海道胆振(いぶり)東部地震」によって北海道全域が停電(ブラックアウト)したのは、まさにこの周波数変動によるものであった(本号の「クローズアップ」14ページを参照)。

 このような電力需給のバランスをとるために、DRの需要制御として、

  1. 電気の需要量を増やす「上げDR」
  2. 電気の需要量を減らす「下げDR」

の2つのパターンがある(表4)。これによって送電線に流れる電気の量を微調整し、電気の品質(周波数)を一定に保つようにしている。

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