卒FIT時代の再エネの問題点と課題
〔1〕FIT制度への依存から自立へ
現在、FIT制度を背景に普及してきた再エネは、図3に示すような、国民負担の増大などの課題を解決することが求められている。
図3 国民負担の増大と電気料金への影響
例えば、2018年度のFIT買取費用の総額が3.1兆円であり、電気料金への賦課金は、総額2.4兆円にもなっており、国民の負担が増大している。このため、再エネのコストダウンを加速させ、FIT制度への依存から自立することが急務となり、現在、次のような取り組みが行われている。
- 再エネの主力電源化を目指して、革新的な技術開発や入札制などを活用し、他の電源と比べて競争力のもてる水準までコストを下げる。
- ①急速なコストダウンが見込める電源(太陽光・風力)と、②コミュニティとの共生を図りながら自立に向かう電源(地熱・中小水力・バイオマス)を切り分ける。このため、FIT法の抜本的な見直しに向けた取り組みを行う。
- 卒FIT時代に向けて、①自家消費を中心とした需要家側の再エネ活用モデル、②売電を中心とした供給側の再エネ活用モデルに分類し、必要な事業環境の整備を行う。
〔2〕ユーザーの意識にも大きな変化
このような背景のもとに、太陽光発電を導入しているユーザーの意識にも大きな変化が生じている。
タイナビ総研注7が太陽光発電を導入しているユーザー150名に、「タイナビ蓄電池の利用に関するアンケート調査」を実施したところ、蓄電池の利用を検討しているユーザーがトップを占めた。その理由として「太陽光発電の固定価格買取期間(FIT期間)が終了するため」が第1位(46%)となり、卒FITに向けて、蓄電池への期待が大きくなっていることが判明した(2018年11月30日発表注8)。
〔3〕卒FIT電源時代のビジネスモデル
このような中、FITに頼らないビジネスモデルが登場してきた。
その筆頭は、再エネ発電所から電力を調達してそれをプール化し、ブロックチェーン・トラッキングシステム(追跡システム)によって、電源証明付きの電力をRE100系企業や自治体、個人に販売するビジネスであり、後述する「みんな電力」が、すでに2018年12月5日から商用化を開始した。
また、2019年11月から登場する卒FIT電源に対して、すでに具体的な買取メニューを発表して営業活動を展開する事業者や、買取りを行うことを表明する事業者も登場してきた。
例えば、総合エネルギー事業を展開し小売電気事業者でもある株式会社スマートテック(本社:茨城県水戸市)は、2018年6月、「卒FIT」世帯に向けた電力買取サービス「スマートFIT」という2019年11月以降の買取りメニューを発表し、先行受付を開始した注9。さらに、積水ハウスや中部電力、TOKAIホールディングスなども、卒FIT電源の買取りや新サービスの取り組みを発表している。
▼ 注7
タイナビ総研:株式会社グッドフェローズ(東京都品川区)が運営するタイナビ総合研究所。次世代エネルギー業界の発展のための調査研究および広報活動等を行う。