EC企業としてのAmazon
AmazonがECをビジネスにしている企業であることは自明のことであるが、より正確にAmazonのビジネスを分析するために、Amazonの「メーカーとしての側面」と、「EC企業としての側面」に分けて考える必要がある。以下に、それぞれについて説明する。
〔1〕Amazonの利用頻度を高めるための端末群
まず、メーカーとしての側面から見てみると、Amazonは、表1にまとめた4種類の端末を開発し、販売している。 Amazonは、これらの端末を、原価に近い、または原価を割る価格で販売している。これは、Amazonが、顧客がAmazonを利用する頻度を高くすることを目的として端末を展開しているからである。つまり、端末を通して「ECとしてのAmazon」の売上を増やすことを狙っているのである。
表1 Amazonが展開している端末一覧
〔出所 著者作成〕
〔2〕FireflyとFlow
次に、EC企業としてのAmazonの取り組みを見ていく。
Amazonは、顧客が、商品の注文を日常の生活からシームレスに行えるようにすることに力を入れている。
図3 Fire Phoneに搭載されているFireflyの起動画面
〔出所 https://developer.amazon.com/public/solutions/devices/fire-phone/docs/understanding-firefly〕
例えば、前述したFire Phoneには、Firefly注2という機能が標準装備されている。これは、スマートフォンのカメラを本の表紙やCDのジャケット、食品のパッケージなどに向けると、自動で商品を認識し、Amazonで購入できるようにするという機能である(図3)。同社は、iOSやAndroid向けにFlow注3という類似のアプリを提供している。
FireflyやFlowが優れているのは、本や食品のバーコードではなく、外観をカメラに写すだけで、その商品を認識してくれるというところにある。Fireflyでは、このような機能に加えて、流れている音楽に端末を向けると、曲を自動認識し、その曲がAmazonでダウンロードできるようになっていれば、すぐに購入することができる機能も備えている。
Fire Phoneでは、側面にFirefly専用ボタンが付いているため、わざわざFireflyアプリを立ち上げなくても、すぐにこの機能を立ち上げられるようになっている。このことからも、Amazonがこの機能を重要視していることがわかる。
〔3〕Amazon Dash
さらに、AmazonFreshという生鮮食料品配達サービス注4向けには、注文時に使用するAmazon Dashというリモコンのような端末を開発している(図4)。AmazonFreshのユーザーは、PC上から注文する以外に、このAmazon Dashを使って注文することもできる。
図4 Amazon Dash外観
〔出所 https://fresh.amazon.com/dash/)を元に編集部作成〕
図5 Amazon Freshアプリの画面
〔出所 https://itunes.apple.com/us/app/amazonfresh/id474067631?mt=8〕
Amazon Dashを使うためには、事前にWi-Fi経由でインターネットに接続し、Kindle FireやiPhone、Android端末などにインストールしてあるAmazonFreshアプリと接続する必要がある。
Amazon Dashには、入力のためのインタフェースとしてLEDを照射するタイプのバーコードリーダーと音声認識モジュールが付いている。Amazon Dashを使って注文する際には、バーコードリーダーを使って注文したい商品のバーコードを読み取るか、注文したい商品名を話しかけることで音声認識によって商品が特定される。
注文しようと思っていたものとは別の商品が勝手に発注されることがないように、Amazon Dash経由で入力された商品は、一度、AmazonFreshのカートに入る。その後、PCやタブレット端末などで内容を確認し、最終注文をするという仕組みになっている(図5)。
〔4〕ドローンを利用した流通革命
これらに加えて、Amazonは、顧客に配達するための流通についてもさまざまな取り組みを行っている。その中でも現時点でもっとも野心的なものが、「Prime Air」というプロジェクト名で呼ばれている無人飛行機での配達サービスの実現化である。このサービスは「ドローン」(drone)と呼ばれる無人飛行機(図6)を活用することで、注文から30分以内で自宅に届けることを目指している。
図6 Prime Airで使われるドローン
〔5〕Amazonのスマートハウス関連の取り組み
スマートハウスとの関連で言えば、よりわかりやすい取り組みも行っている。それは、同社が展開するHome Automation Store注5である。
Home Automation Storeは、2014年3月でオープンから1年が経ち、本誌2014年8月号で紹介した、Nest Labsのサーモスタットや、同社が買収したDropcamの家庭内監視カメラなど、現在では数千ものスマートホーム関連の商品を取りそろえている注6。
実際にHome Automation Storeを見てみると、監視やセキュリティのためのツールやエネルギー管理というような用途ごとの分類に加え、どのような製品を選べばよいのかわからないユーザー向けにソリューションセンターや購入ガイドなどのコンテンツも用意している。
▼ 注2
Understanding Firefly - Amazon Apps Games Developer Portal、https://developer.amazon.com/public/solutions/devices/fire-phone/docs/understanding-firefly
▼注3
Flow Powered by AmazonA9、http://www.a9.com/whatwedo/mobile-technology/flow-powered-by-amazon/
▼ 注4
同サービスは、2014年9月時点でシアトルとカリフォルニアでのみサービス展開されている(囲み記事参照)。
▼ 注5
Home Automation:Ama-zon.com、http://www.amazon.com/home-automation-smarthome/b/ref=topnav_storetab_e_ha?ie=UTF8&node=6563140011
▼ 注6
2014年9月3日Amazonのプレスリリースより、http://phx.corporate-ir.net/phoenix.zhtml?c=176060&p=irol-newsArticle&ID=1963321