[クローズアップ]

2024年度の容量市場を見据えた第1回オークションの落札結果が公表!

― 約定総容量は1億6,769万kW、約定価格は1万4,137円/kW ―
2020/10/01
(木)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

電力広域的運営推進機関(以下、広域機関)(注1)が、2020年7月1日〜7日の期間に、2024年度の容量市場向けに行われた第1回オークションの落札結果を、「容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2024年度)」として、9月14日に発表した。
ここでは、容量市場の概要に触れた後、第1回オークション結果の具体的な内容を見ていく。
今回のオークションでは、約定総容量(全国)は、目標調達量の1億7,747万kWよりも978万kW少ない、1億6,769万kWとなったことや、全国の電源等区分別の応札容量や発電方式別の応札容量を紹介する。

容量市場とは

〔1〕kW価値とkWh価値の違い

 容量市場の「容量」とは、電気を発電する能力のことである。例えば「100万kWの火力発電所」という場合の「発電能力」100万kWのことを指し、「kW」という単位が使用される。この容量は、容量市場で「kW価値」として取引される。

 容量市場の管理・運営は、広域機関(OCCTO)が行う。

 一方、100万kWの火力発電の「電力量」は、例えば1時間(1hour)発電した場合は100万kWh(100万kW×1hour)と表され、「kWh」という単位を使用する。この電力量は、卸電力市場で「kWh価値」として取引される。

 卸電力市場の管理・運営は、日本卸電力取引所(JEPX)が行う注2

 図1に、小売電気事業者と発電事業者、卸電力市場、容量市場の関係を示す。

図1 「容量市場/卸電力市場」と「小売電気事業者/発電事業者」の関係と役割

図1 「容量市場/卸電力市場」と「小売電気事業者/発電事業者」の関係と役割

出所 電力広域的運営推進機関、「容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2024年度)」、2020年9月14日

〔2〕100万kW発電所は短期間にできない

 今後、日本の電力市場を見通して発電所をつくる場合、例えば、100万kW規模の火力発電所は1、2年などの短期間には建設できないため、実際に電力が必要となる4年前に予測して、全国的にその電力供給力を確保しなければならない。

 すなわち、容量市場とは、将来にわたって電源不足にならないように、日本全体の電力の供給力(kW)を効率的に確保する市場のことである。このような背景から、今回の第1回オークションは、対象実需給年度となる2024年度の4年前の2020年度に行われたのである。

 この容量市場が確保する電力供給量によって、電気の価格を安定化でき、小売電気事業者は安定した経営ができるようになる。さらに、電気料金の安定化が、電気を使用する需要家にもメリットをもたらすことになる。

容量市場初の第1回オークション結果

 広域機関は、このほど2020年度から開設された容量市場の第1回オークションを2020年7月1日〜7日に行い、その落札結果を発表した。

 落札結果は、表1、図2に示すように、

表1 2020年度実施 容量市場メインオークション(対象実需給年度:2024年度)の約定結果(オークション入札期間 2020年7月1日~7日)

表1 2020年度実施 容量市場メインオークション(対象実需給年度:2024年度)の約定結果(オークション入札期間 2020年7月1日~7日)

約定(やくじょう):電力の売買において取引が成立すること
出所 電力広域的運営推進機関、「容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2024年度)」(2020年9月14日)をもとに編集部で作成

図2 2020年度メインオークション需要曲線(指標価格、目標調達量等)

図2 2020年度メインオークション需要曲線(指標価格、目標調達量等)

※目標調達量は、FIT電源等の期待容量の合計を含む。
出所 電力広域的運営推進機関、「2020年度メインオークション需要曲線」、2020年6月3日

  1. 約定総容量(全国)は、目標調達量の1億7,747万kWよりも978万kW少ない、1億6,769万kWとなった。
  2. 約定価格は、全エリアで上限価格の1万4,138円/kWよりも1円安い、1万4,137円/kWとなった。
  3. 経過措置を踏まえた約定総額は、1兆5,987億円(約1.6兆円)となった。

 表2に、全国約定の結果(約定総容量、約定総額)と北海道から九州までのエリアごとの約定価格と約定容量、約定総額の詳細を示す。

表2 2020年度実施 容量市場メインオークション(対象実需給年度:2024年度)の約定結果(約定総容量、約定価格、約定総額)

表2 2020年度実施 容量市場メインオークション(対象実需給年度:2024年度)の約定結果(約定総容量、約定価格、約定総額)

出所 電力広域的運営推進機関、「容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2024年度)」、2020年9月14日

 また表3に、今回のオークション結果から、一般送配電事業者や小売電気事業者が負担する容量拠出金(試算)を示す。

表3 一般送配電事業者・小売電気事業者が負担する容量拠出金(試算)

表3 一般送配電事業者・小売電気事業者が負担する容量拠出金(試算)

(注)四捨五入の関係で合計が合わないことがある。
H3需要:供給計画における各エリアの各月最大3日平均電力
出所 電力広域的運営推進機関、「容量市場メインオークション約定結果(対象実需給年度:2024年度)」、2020年9月14日

 一般送配電事業者は、1,336.9億円、小売電気事業者は14,650.5億円と、高額な負担となる。


▼ 注1
https://www.occto.or.jp/

▼ 注2
http://www.jepx.org/

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