[クローズアップ]

NTT西日本とNTTスマイルエナジー、日産がEV(V2B)の実証結果を公表

― 消費電力予測精度94%、夏季ピークカット率14%を実現 ―
2019/10/08
(火)
インプレスSmartGridニューズレター編集部

主な取り組みと実証結果

 2019年夏季のピークカット実証は、次のように実施され、その効果が確認された。

  1. 電力会社からの買電量の実績(kWh)に基づく買電量予測、および日射量予測に基づく発電量予測(今回は過去実績を使用)からオフィスビルの消費電力量を予測
  2. 消費電力予測からピーク時間帯を割り出し、EVから放電するスケジュールをV2Bに登録
  3. スケジューリングされた時間にEV(3台同時)から放電し、ピークカットを実施

〔1〕消費電力予測は94%を実現

 消費電力を精度よく予測することによって、「ピークカットの時間帯」や「ピークカットに必要なEV放電量(kWh)」を予測することができ、それによって効果的なピークカットを実現できる。

 図2は、夏場の2019年7月31日の消費電力予測(30分値)の状況であり、赤い点線が消費電力の予測(kWh)を、青色の実線が消費電力の実績値(kWh)を示している。

図2 消費電力の予測状況(30分値)

図2 消費電力の予測状況(30分値)

出所 https://nttse.com/pressrelease/2019/09-26/1513/

 この結果から、9時〜15時のピークカット時間帯に限って見ると、その予測精度は94%と高くなっており(図の赤い矢印:⇔)、ほぼ精度よく予測できている結果となった。

〔2〕ピークカット率は14%

 図3は、夏季における電力消費のピークカットの状況(30分値)を示した図である。

図3 ピークカットの実施結果(1日)

図3 ピークカットの実施結果(1日)

出所 日産自動車/NTTスマイルエナジー/NTT西日本、「EV(V2B)を活用したオフィスビルでのエネルギーコスト・CO2削減トライアルの夏季実証結果について」、2019年9月26日

 ピークカットは、電力消費のピーク地点(13時〜13時30分)の30分間において、カーポートPVで発電した電気の自家消費とEV3台から同時にオフィスビルへの放電によって実施された。

 具体的には図3に示す通り、ピーク地点において、

 ①自家消費によって6.6kWhを削減(PVの自家消費量)し、

 ②EVからの放電によって7.5kWhを削減し、

トータル(①+②)で、14.1kWh(緑線=自家消費量PV6.6kWh+EV放電量7.5kWh)を削減できた。また、ピークカットの容量(kW)は、28.2kW(ピークカット率14%)となった。

〔3〕エネルギーコスト削減

 実証でのエネルギーコストの削減目標は125万円/年であるが、得られた結果から、次のような削減が可能となる見通しとなった。

  1. 電気料金の削減

    • 電力ピークカットによって、28.2kW相当の基本料金が削減可能。
    • 7月10日〜8月31日(53日)の太陽光の発電量(実績)4,153kWhに対して、日射量注4から自家消費量(想定)によって22,270kWh/年の従量料金を削減可能。
    • コスト的には、基本料金と従量料金で約95万円/年注5の削減効果が期待できる。
  2. EV化(電化)による燃料費削減(ガソリン料金⇒電気料金)
    • EV3台の4〜8月(153日)の走行距離は8,008㎞、使用電力量1,007kWhであったので、約11万円/年注6の燃料費の削減効果が期待できる。

 これらを合計すると、エネルギーコストの年間削減額は約106万円/年が見込まれる。

〔4〕CO2排出量削減

 CO2排出量の削減目標は目標9.6t-CO2/kWh(マイナス4%)であるが、得られた結果から次のような削減が可能となる見通しとなった。

  1. 太陽光自家消費によるCO2削減(系統電力と再エネ電力の排出係数の差)

    • 7月10日〜8月31日(53日)の発電量(実績)4,153kWhに対して、年間日射量注7から年間自家消費(想定)22,270kWhとなる。
    • 年間のCO2削減量(想定)は、マイナス14t注8となる。
  2. EV化(電化)によるCO2削減(ガソリンと電気のCO2排出係数の差)
    • EV3台の4〜8月(153日)の走行距離は8,008㎞であった。
    • 当該距離をガソリンから電気に切替えたことでマイナス0.5t削減となった。
    • 年間のCO2削減量(想定)は、マイナス0.7t注9となる。

 これらを合計すると、CO2排出量の年間削減量は14.7t/年(マイナス4.5%)が見込まれる(図4)。

図4 CO2排出量の年間削減量は14.7t/年(マイナス4.5%)の見込み

図4 CO2排出量の年間削減量は14.7t/年(マイナス4.5%)の見込み

出所 日産自動車/NTTスマイルエナジー/NTT西日本、「EV(V2B)を活用したオフィスビルでのエネルギーコスト・CO2削減トライアルの夏季実証結果について」、2019年9月26日


▼ 注4
NEDOが提供している山口エリアにおける日射量データを活用を活用して年換算を行った。

▼ 注5
効果算出には、中国電力の業務用電力の標準料金用表を活用した。

▼ 注6
ガソリン車の燃費は20km/ℓ、ガソリン単価は150円/ℓ、電力単金は中国電力の業務用電力の標準料金表した。また、走行距離の年換算は日数で換算を行った。

▼ 注7
NEDOが提供している山口エリアにおける日射量データを活用。

▼ 注8
中国電力の排出係数を活用。

▼ 注9
ガソリン車は『CO2排出係数2.3kg-CO2/ℓ、燃費20km/ℓ』、EV車は『電力提供事業者であるエネットの排出係数』を活用して算出。

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