主な取り組みと実証結果
2019年夏季のピークカット実証は、次のように実施され、その効果が確認された。
- 電力会社からの買電量の実績(kWh)に基づく買電量予測、および日射量予測に基づく発電量予測(今回は過去実績を使用)からオフィスビルの消費電力量を予測
- 消費電力予測からピーク時間帯を割り出し、EVから放電するスケジュールをV2Bに登録
- スケジューリングされた時間にEV(3台同時)から放電し、ピークカットを実施
〔1〕消費電力予測は94%を実現
消費電力を精度よく予測することによって、「ピークカットの時間帯」や「ピークカットに必要なEV放電量(kWh)」を予測することができ、それによって効果的なピークカットを実現できる。
図2は、夏場の2019年7月31日の消費電力予測(30分値)の状況であり、赤い点線が消費電力の予測(kWh)を、青色の実線が消費電力の実績値(kWh)を示している。
図2 消費電力の予測状況(30分値)
この結果から、9時〜15時のピークカット時間帯に限って見ると、その予測精度は94%と高くなっており(図の赤い矢印:⇔)、ほぼ精度よく予測できている結果となった。
〔2〕ピークカット率は14%
図3は、夏季における電力消費のピークカットの状況(30分値)を示した図である。
図3 ピークカットの実施結果(1日)
出所 日産自動車/NTTスマイルエナジー/NTT西日本、「EV(V2B)を活用したオフィスビルでのエネルギーコスト・CO2削減トライアルの夏季実証結果について」、2019年9月26日
ピークカットは、電力消費のピーク地点(13時〜13時30分)の30分間において、カーポートPVで発電した電気の自家消費とEV3台から同時にオフィスビルへの放電によって実施された。
具体的には図3に示す通り、ピーク地点において、
①自家消費によって6.6kWhを削減(PVの自家消費量)し、
②EVからの放電によって7.5kWhを削減し、
トータル(①+②)で、14.1kWh(緑線=自家消費量PV6.6kWh+EV放電量7.5kWh)を削減できた。また、ピークカットの容量(kW)は、28.2kW(ピークカット率14%)となった。
〔3〕エネルギーコスト削減
実証でのエネルギーコストの削減目標は125万円/年であるが、得られた結果から、次のような削減が可能となる見通しとなった。
- 電気料金の削減
- 電力ピークカットによって、28.2kW相当の基本料金が削減可能。
- 7月10日〜8月31日(53日)の太陽光の発電量(実績)4,153kWhに対して、日射量注4から自家消費量(想定)によって22,270kWh/年の従量料金を削減可能。
- コスト的には、基本料金と従量料金で約95万円/年注5の削減効果が期待できる。
- EV化(電化)による燃料費削減(ガソリン料金⇒電気料金)
- EV3台の4〜8月(153日)の走行距離は8,008㎞、使用電力量1,007kWhであったので、約11万円/年注6の燃料費の削減効果が期待できる。
これらを合計すると、エネルギーコストの年間削減額は約106万円/年が見込まれる。
〔4〕CO2排出量削減
CO2排出量の削減目標は目標9.6t-CO2/kWh(マイナス4%)であるが、得られた結果から次のような削減が可能となる見通しとなった。
- 太陽光自家消費によるCO2削減(系統電力と再エネ電力の排出係数の差)
- 7月10日〜8月31日(53日)の発電量(実績)4,153kWhに対して、年間日射量注7から年間自家消費(想定)22,270kWhとなる。
- 年間のCO2削減量(想定)は、マイナス14t注8となる。
- EV化(電化)によるCO2削減(ガソリンと電気のCO2排出係数の差)
- EV3台の4〜8月(153日)の走行距離は8,008㎞であった。
- 当該距離をガソリンから電気に切替えたことでマイナス0.5t削減となった。
- 年間のCO2削減量(想定)は、マイナス0.7t注9となる。
これらを合計すると、CO2排出量の年間削減量は14.7t/年(マイナス4.5%)が見込まれる(図4)。
図4 CO2排出量の年間削減量は14.7t/年(マイナス4.5%)の見込み
出所 日産自動車/NTTスマイルエナジー/NTT西日本、「EV(V2B)を活用したオフィスビルでのエネルギーコスト・CO2削減トライアルの夏季実証結果について」、2019年9月26日
▼ 注4
NEDOが提供している山口エリアにおける日射量データを活用を活用して年換算を行った。
▼ 注5
効果算出には、中国電力の業務用電力の標準料金用表を活用した。
▼ 注6
ガソリン車の燃費は20km/ℓ、ガソリン単価は150円/ℓ、電力単金は中国電力の業務用電力の標準料金表した。また、走行距離の年換算は日数で換算を行った。
▼ 注7
NEDOが提供している山口エリアにおける日射量データを活用。
▼ 注8
中国電力の排出係数を活用。
▼ 注9
ガソリン車は『CO2排出係数2.3kg-CO2/ℓ、燃費20km/ℓ』、EV車は『電力提供事業者であるエネットの排出係数』を活用して算出。