電力インフラのレジリエンスに関する政府の動き:電力レジリエンスWGの再開
台風15号によって、関東広域では最大約93万戸の停電が発生した。特に千葉県内では送配電設備の被害が大きく、復旧作業にかなりの時間を要した。
これを踏まえ、長期停電およびその復旧プロセス、その他課題となった事項について検証を行うため、内閣官房に「令和元年台風第15号に係る検証チーム」(2019年)が発足し、同検証チームでは、年内に検証報告書を取りまとめる予定だ。
そのうち、電力分野については、電力レジリエンスWG注1を再開し、データや事実に基づき、台風19号の被害についても検討されているほか、2018年の同WGで取りまとめた対策の取り組みとして、主に運用上の改善やフォローアップを実施していくとしている。
持続可能な電力システム構築小委員会の設置:議論の対象となる制度構築の分野
総合エネルギー調査会基本政策分科会の下に設置された「持続可能な電力システム構築小委員会」においては、発電から送電、配電に至るまでの電力システムを再構築し、中長期的な環境変化に対応可能な強靱化を図るための具体的な方策について、検討が進められることとなった。
2019年11月8日の第1回会合において、同小委員会で議論される制度構築の分野は、
① 早期復旧のための関係者の連携強化
② 強靭な電力ネットワークの形成
③ 電源等の分散化
の3つに大きく整理され、具体的な議論が始まった(表1)。今後のスピード感ある議論の内容に注目したい。
表1 小委員会で議論を行う制度構築の分野(赤字は第1回会合における論点)
中国電力とエネルギア・ソリューション・アンド・サービス(ESS)注2が開始した「自立電源設備サービス」
自然災害時の停電時にも電気を使い続けたいといったニーズに対応するため、新サービスの提供も開始された。
中国電力グループは、自立して電力供給が可能な分散型電源として「蓄電池設備」や「V2H」注3と既存の太陽光発電設備などと組み合わせて利用することで、停電時でも日常生活に近い状態で電気を使用できる「自立電源設備サービス」の提供を開始した。
同サービスのラインナップとしては、「Smart Star L」(蓄電池)と「SMART V2H」の2つの全負荷型の自立電源機器を提供する(表2)。
表2 「自立電源設置サービス」関連の商品概要
※1 https://www.nfcorp.co.jp/pro/as/products/bat_sys6/spec.html
※2 http://www.mitsubishielectric.co.jp/home/smartv2h/product/spec.html
出所 中国電力、エネルギア・ソリューション・アンド・サービスのプレスリリース、「自立電源設置サービス」について(いずれも2019年11月20日)、をもとに一部加筆修正して編集部作成
http://www.energia.co.jp/press/2019/12170.html
http://www.energia.co.jp/assets/press/2019/p191120-1a.pdf
▼ 注1
電力レジリエンスWG:総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 電力・ガス基本政策小委員会と、産業構造審議会保安・消費生活用製品安全分科会電力安全小委員会の下に設置された、合同ワーキンググループ。2018年10月18日に第1回会合が開催された。
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/denryoku_gas/resilience_wg/index.html
▼ 注3
V2H:Vehicle to Homeの略。EV(電気自動車)等の電力を家庭用の電力供給源として利用する仕組み。