ヤンマー(YES)のFIT発電事業の経緯
〔1〕バイオガス発電所導入の経緯
ヤンマー(YES)が、バイオガス発電所を栃木県の思川浄化センターおよび大岩藤浄化センターに導入した経緯は、2018年12月に栃木県が公募していた、県南部の流域下水道浄化施設である大岩藤浄化センター(栃木市)と思川浄化センター(野木町)における消化ガス発電事業の発電事業者として、ヤンマー(YES)が選出されことに始まる。2019年12月に同社は設備認定通知を受け、これを契機に、発電設備の導入が実現した。
今回開始するFIT発電事業では、後述するように、ヤンマー(YES)が2つの浄化センター内に発電設備を設置し、栃木県から購入した消化ガス注1を利用して発電した電力を、電力会社に売電する。また、発電時に発生したエンジンの廃熱を、下水処理場の消化槽の加温に活用するという構想だ。
〔2〕2カ所の発電所のプロフィール
ヤンマー(YES)のバイオガス発電所は、「YANMAR ENERGY FARM」(ヤンマーエナジーファーム)と命名された。
この名称には、エネルギーを生み出す場所であることを示すとともに、エネルギーの地産地消ができるシステムを構築していきたいという意味が込められている。
写真2 栃木県の2箇所の浄化センターに設置されたYANMAR ENERGY FARM
出所 ヤンマーエネルギーシステム株式会社「エネルギーソリューションについて」、2020年2月27日
写真2に示すように、
- 栃木県の思川浄化センター内:「YANMAR ENERGY FARM 栃木思川」(発電容量:49kW。年間発電量:37万kWh)
- 岩藤浄化センター内:「YANMAR ENERGY FARM 栃木大岩藤」(発電容量:25kW。年間発電量:19万kWh)
に設置された発電設備は、それぞれ2020年2月と4月に順次稼働する。2つの発電所の合計発電量は、一般家庭100軒分の消費電力に相当する(表1)。
表1 栃木県の2箇所の浄化センターに設置されたYANMAR ENERGY FARM
※50kW以上になると高圧連系をする必要がでてくるため、出力を24.5kWに抑制し2台で49kWの発電容量としている。
出所 各種資料より編集部作成
表2 バイオガス発電機BPシリーズ(BP25D1-TFJG 標準機)の主な仕様
出所 https://www.yanmar.com/jp/energy/renewable_energy/digestion_gas/products/
〔3〕バイオガス発電機の主な仕様
YANMAR ENERGY FARMに使用される、バイオガス発電機(BP25D1-TFJG 標準機)の基本仕様は、定格出力25kW、出力電圧200V、出力電流72.2Aのほかに、表2に示すようなエンジンや熱回収、システム、効率となっている。
▼ 注1
消化ガス:下水汚泥の発酵などによって発生するガスのこと。